新年明けましておめでとうございます。

なかなか忙しくてブログの更新も滞っていますが、もう少ししたら余裕も出てくると思いますので今年は色々な本を紹介したいと思います。記事にしたい本はいっぱいありますしね。

さてさて、年末年始の休みに前から読みたかった漫画を購入したので、2013年最初の本としてそれを紹介したいと思います。一発目がこれでどうなんだろうと若干思わなくもないですが、今が旬ですしね。

じょうじ

そんなわけで『2013年版このマンガがすごい!オトコ編』で1位を獲得、現在『週間ヤングジャンプ』で連載中、“テラフォーマーズ”の紹介です。

※なお、ネタバレやグロテスクな表現や画を含みますので続きを読む方はご注意ください。

 

本書は2013年1月5日現在、『週間ヤングジャンプ』に連載中で第3巻まで発売されています。原作は貴家悠、画は橘賢一。

2011年より『ミラクルジャンプ』で連載が始まり、途中から『週間ヤングジャンプ』に移籍しました。そして先にも書いたとおり、『2013年版このマンガがすごい!オトコ編』で1位を獲得するなどここ最近話題の作品です。

私もネット界隈で噂を聞いていて、前々から読んでみたかったので年末年始の休みを機に3巻までまとめ買いしました。

大まかなストーリーはこうです。

21世紀の人類は人口の増加や資源の枯渇に伴い、火星を人の住める惑星にするための地球化計画『テラフォーミング』をスタートしました。

火星を人の住める星にするためにまずは火星の気温を上げる必要がありました。そこで21世紀の科学者たちは一つの手段を考案したのです。

それはある『』と『黒い生き物』を火星に放ち、地表を黒く染め上げることで太陽光を吸収し火星内部に存在する二酸化炭素の温室効果で気温を上げるという手段でした。

そして時は流れて、今は西暦2599年。

火星の気温は上昇し、テラフォーミングの次の段階へと人類は進むことになります。すなわち500年も前に火星に放たれた『黒い生き物』の駆除・清掃です。

そして今、勇気ある15名の宇宙飛行士たちによる、

宇宙一大がかりな“ゴキブリ退治”が始まるのです!

テラフォーマーズ 公式特設ページ

テラフォーマーズの物語は便宜上、第一部第二部第零部の三つに分かれています。(Wikipedia参照

時系列的には第零部が西暦2577年のことで、宇宙飛行士6名を乗せた有人宇宙艦“バグズ1号”がテラフォーミング後の火星に向かう話になっています。こちらは雑誌で読み切りとして掲載されたもので、今のところ単行本には収録されていません。しかしテラフォーマーズの特設サイトで試し読みをすることが出来ます。

そしてバグズ1号から22年後の西暦2599年が第一部で、15名の宇宙飛行士を乗せた“バグズ2号”の物語となっています。これが単行本の第1巻にあたります。

こちらも試し読みが出来るので是非お試しあれ。

そして単行本の第2巻からが第二部となっています。

西暦2620年、100名の乗組員を乗せた大型宇宙艦“アネックス1号”が火星を目指します。こちらが現在連載中の物語というわけです。

第零部において、人類はごく普通のゴキブリ退治を想定していて、昆虫サイズのゴキブリを数匹採取・研究することが目的でした。しかしバグズ1号の乗員を待ち受けていたモノは、常識離れした謎の生物だったのです。

集英社 テラフォーマーズ 試し読みより

集英社 テラフォーマーズ 試し読みより http://youngjump.jp/web_comic/terra_formars1/

テラフォーマーズ1試し読みページより

これこそが“テラフォーマーズ”を一躍話題にさせた一因でしょう。3億年も姿形を変化させなかったゴキブリは火星という環境下で、瞬発力、しぶとさ、頑丈な甲皮を備えたまま人間大の大きさに進化してしまったのです!

バグズ1号の乗員たちは進化したゴキブリに勇敢に立ち向かうも全く歯が立たずに全滅してしまいます。かろうじて仕留めた一匹のサンプルだけが地球に送られ、研究されたノウハウがバグズ2号の乗員たちに受け継がれています。

その受け継がれた技術が“バグズ手術”と呼ばれるいわば人体改造手術です。表向きには火星の過酷な環境に対応するための手術とされていますが、実態は昆虫のDNAを人体に組み込むことで“ゴキブリ人間(テラフォーマー)”と戦える“昆虫人間”を作り出す手術なのでした。

集英社 テラフォーマーズ 第1巻 119ページより

集英社 テラフォーマーズ 第1巻 119ページより

集英社 テラフォーマーズ 第1巻 120ページより

集英社 テラフォーマーズ 第1巻 120ページより

このように昆虫の力を会得した人間ゴキブリたちと戦っていきます。上のページのようにそのモデルとなった昆虫たちのナレーションもこの漫画の面白いところの一つです。物語の中で実に様々な昆虫が登場し、ゴキブリと対峙していきます。

バグズ2号の乗員たちはバグズ手術による力でゴキブリ相手に奮闘します。しかし少ない情報、少ない人員、そして何よりもゴキブリたちの急速な進化に対抗出来ず、壊滅します。

バグズ1号とバグズ2号の大惨事の結果、火星のテラフォーミングは一時凍結状態となり人類に打つ手はありませんでした。しかし思わぬ事態に陥り、それが第2巻からの第二部へと続く物語です。

バグズ2号の乗員のうち2名だけがかろうじて地球に帰還することが出来ました。しかし、そのときに火星由来のウイルスを地球に持ち帰ってしまう結果となります。人類の中で次第に広まりつつ謎の病気、脅威の致死率100%、その火星由来のウイルスを研究しワクチンを作らなければ人類に未来はありません。

そして今、新たな技術“M.O.手術”を施した100名の人間が火星へと旅立ったのでした。M.O.手術とはバグズ手術による昆虫化をベースに、新たに他の種の生物のDNAを組み込む手術です。その結果、昆虫だけでなく様々な生物の力を組み込むことが出来るようになりました。

登場人物の膝丸燈(ひざまる あかり)が第3巻で放つセリフが実に印象的です。

ついこの間まで砂漠だった火星(ホシ)の虫けらがよ・・・!

125万種以上の生命の炎が燃え盛る・・・

『地球』を嘗めんなよ

出典:『テラフォーマーズ 3』p.114

ここまで紹介したように、このテラフォーマーズはSFのジャンルにおける異能力バトルと呼べるものです。様々な生物の能力をその身に宿した人類が、進化したゴキブリと戦う物語なのです。

私がこのテラフォーマーズをすごいと思った一番の要因は、やはりゴキブリのデザインだと思います。

それはもはやゴキブリと呼んでいいのかも躊躇われるような姿形です。単純に恐怖を呼び覚まします。しかしそれだけではなく、どこか滑稽さや愛らしさも感じてしまうところがまた実に恐ろしい!

私は、記憶に残る物語あるいは心に残る物語というのは、新しい概念を作るか既存の概念を塗り替える力を持っているものだと思っています。その意味でこのテラフォーマーズは読者の”ゴキブリ”という概念を塗り替えるものでしょう。

確かに、今までもゴキブリの恐ろしさやおぞましさを表現してきた物語はたくさんあります。しかしそれらはあくまで既存のゴキブリの延長線上にしかなかったのだと私は思います。あの黒くて小さくてすばしっこくてカサカサと動き回る生物に恐怖を覚えることはあっても、どこかで簡単に殺せるという認識が残っているので安心する部分もあるのです。

しかしこのテラフォーマーズのゴキブリは既存のゴキブリという概念を覆しました。私は覆されました

もし街中や、考えたくもないけれど家の中で、あの黒くてカサカサした生き物を見てしまったら間違いなく“テラフォーマーズ”のゴキブリが頭に浮かぶことでしょう

これはちょっとした恐怖だと思います。ゴキブリに対する恐怖が、虫サイズのゴキブリだけでなく人間の姿形をしたゴキブリとしても呼び覚まされるというのは二重に怖い。

しかしテラフォーマーズのゴキブリは姿形だけでなく、存在においても人間に近いものがあります。それが物語の根底にもあって今後解明されるはずのモノです。すなわち、何故たったの500年でこのような進化を果たしたのかなぜ人型なのかなぜ人類と敵対関係にあるのか。そこに何らかの思惑が絡んでいるのは現時点でもほぼ間違いないことです。それが何者かによるのかは巻を重ねることでわかることでしょう。

ゴキブリとしての恐怖を残しながら、人類としての恐怖も兼ね備えた“テラフォーマー”。それが言いようのない恐怖感と同時に、どこか滑稽さや愛らしさを感じる部分なのだと私は思います。あまりにも人間臭い。

さらにそこに異形化した人類が登場するわけです。M.O.手術によってもはや人類なのか昆虫なのかよくわからない彼らは、それでも人であり続けようとし人類のために戦います。とかくゴキブリ人間の異様さが目立ちがちな本作ではありますが、(良い意味で)作中に人間臭さが漂うヒューマンドラマとなっています。

人とは何か、ゴキブリとは何か、なかなか今後の展開から目が離せないテラフォーマーズです。

是非あなたも読んでみてはいかがでしょうか。

じょうじ