ニンジャスレイヤーの中でも最高にカッコいいおっさんキャラクター、タカギ・ガンドー

ポンコツなくせに決めるところはきっちり決めるガンドーにはしびれますし、ユーモアな会話には人情味が溢れていて思わずくすりと笑ってしまいます。魅力的なおっさんが活躍する作品にハズレなし、古事記にもそう書いてあります。

本書【ピストルカラテ決死拳】にはガンドーの最高傑作エピソード【リブート、レイヴン】が掲載されています。登場キャラクター、ストーリー構成、文章表現、どれをとっても一級品のエピソードです。まるで良質の文学作品を読んでいるかのような気分にもなり、初めて読んだときは本当に衝撃的でした。

それでは第2部の第5巻、【ピストルカラテ決死拳】の紹介と感想を書いていこうと思います。

ピストルカラテ決死拳 掲載エピソード

ピストルカラテ決死拳には以下のエピソードが収録されています。リンク先は全て【ニンジャスレイヤー Wiki*】の該当エピソードのページです。

シージ・トゥ・ザ・スリーピング・ビューティー(Siege to the Sleeping Beauty)

ウェン・ザ・サン・バーンズ・レッド(When the Sun Burns Red)(書籍限定)

ガントレット・ウィズ・フューリー(Gauntlet with Fury)

ガントレット・ウィズ・ミスフォーチュン(Gauntlet with Misfortune)(書籍限定)

ビガー・ケージズ・ロンガー・チェインズ(Bigger Cages, Longer Chains)

リブート、レイヴン(Reboot, Raven)

グランス・オブ・マザーカース #3(Glance of Mother-Curse #3)

今回はこの中から【リブート、レイヴン】をご紹介していきます。

リブート、レイヴン

----REBOOT----

伝説の私立探偵クルゼ・ケンの弟子であったタカギ・ガンドーはクルゼの死後、彼の意志を継いで【ガンドー探偵事務所】を営んでいました。

しかしうだつの上がらないガンドー。助手のシキベ・タカコの給料も2ヶ月滞納しており、探偵事務所の経営は実際切羽詰まっていました。ところがある日、謎の依頼人から超高額の依頼が飛び込んできます。

「……怪盗スズキ・キヨシを捕まえてほしいのだ」

【リブート、レイヴン】 ニンジャスレイヤー Wiki*

第二回エピソード人気投票で第1位、書籍第二部エピソード人気投票でも他を圧倒し第1位を獲得した名エピソード、それが【リブート、レイヴン】です。

スワンソングのように他にも名エピソードと評価されるものはありますが、その評価には「読んでみたら思いのほか面白かった!」というものが含まれているはずです。ニンジャスレイヤーとか言う何だかよく分からない作品が気になり、実際に読んでみたら想像とは全然違ったと感じた方も多いことでしょう。

ですが、このエピソードは違います。

書籍の第9冊目を読んでいる読者はすでにニュービーではないはずです。ニンジャスレイヤーの面白さを理解し受け入れている方々が多数でしょう。少なくとも私はそうでしたので、「思いのほか面白い!」なんて感想はもう抱きませんし、評価の対象にはなりません。

リブート、レイヴン】は一つの到達点です。「思いのほか面白い!」のではなく、「こんなにも面白いのか!」と驚嘆させられたエピソードでした。読み終わったそのとき、私の中でニンジャスレイヤーの評価は一段階上のレイヤーに昇ったように思われます。

主人公のガンドーを始め、助手のシキベに宿敵スズキ・キヨシなど登場キャラクターはどれも魅力的で、ストーリーも抜群に面白いエピソードです。文章の緩急は極めてバランスが良く、文章表現や構成には美しさすら漂います。語るべき点はたくさんあるでしょうが、ここでは文章構成について感想を少し書いてみようと思います。

【リブート、レイヴン】では幾度か繰り返される文章が出てきます。しかしうっとうしさは微塵も感じず、シーンの区切りとして時間や場所が切り替わることで物語に良いテンポを生み出しています。繰り返される文章によって物語の中へと沈み込んでいくかのような感覚を私は覚えました。読めば読むほど、段階的に物語は味わい深く進展していくのです。

出典:【リブート、レイヴン】#1より

「イヤーッ!グワーッ!」のような単純なものから大胆に同じ文章を繰り返すものまで、ニンジャスレイヤーでは文章をリフレインさせる手法がよく使われています。ですから別段珍しいものではないのですが、このエピソードでの手法は今までとは趣きが異なるように感じました。

ニンジャスレイヤーで見られるリフレインは文章の圧縮やシーンの印象づけを目的にしたものがほとんどであり、『ツイッターで小説を連載するための技術』だと私は思っています。ですが【リブート、レイヴン】は明らかに違います。文章は圧縮されるどころかむしろ増量し、シーンの印象づけではなくシーンの切り替えにリフレインが使われています。

では何のためのリフレインなのか、それは『ガンドーをより深く描写するための表現』であることは明白でしょう。

リフレインによってシーンの切り替えが次々と行われて段階的にストーリーは展開していきます。しかしリフレインの効果で強い既視感を感じる文章にもなっており、特にガンドーの心理描写には強い連続性を感じる構成になっています。シーンには段階的なメリハリがありつつもガンドー個人に関しては連続性が維持されているため、読み進めるほどに彼の魅力は徐々に深みを増していくのです。

水の底へと沈んでいくかのように少しずつ、しかし確実に、ガンドーの心の深みへとストーリーは沈み込んでいきます。この感覚を味わえる文章は素晴らしいの一言です。

キャラクター描写のためにここまでリフレインを多用しているのは他のエピソードには見当たりません。それも単調な繰り返しではなく、微妙な差異を表現しながらストーリーに深みを持たせています。そしてそれらがエピソードの中でほぼ完璧に機能しているのです。キャラクター性、ストーリー展開、そしてリフレインによる文章構成、これらのバランスは極めて美しく保たれており、エピソードの完成度はずば抜けています。

その上でこのエピソードの本当に凄いところは、リフレインが一つに限らないところだと私は思っています。リフレインは二重三重に配置されており、物語に奥深さを生み出すだけではなく、その深みから一気に天へと羽ばたくような加速感や開放感まで表現しきっています。だからこそカラス・ニンジャとの邂逅シーンに私は震え、感動と興奮を抑えきれなかったのでした。

リフレイン自体は決して珍しくもないはずなのに、その文章が表現しているものはこれまでのニンジャスレイヤーとはかけ離れています。リフレインをいつものお約束だと思い込んで読んでいると術中にはまり、気がついた時にはすでにエピソードの深みにはまっていることでしょう。だからこそ、このエピソードには度肝を抜かされるのです。

べた褒めしてきた【リブート、レイヴン】ですが、間違いなくその価値に値するエピソードだと私は信じています。第1部を読み終わって、第2部も終盤に差し迫り、「いやー、ニンジャスレイヤーってほんと面白い!」とか思っていたら、「ニンジャスレイヤーの面白さはこんなもんじゃない!イヤーッ!」ってぶん殴られた気分です。グワーッ!

この作品は一体どこまで面白くなるのか。ますます胸の鼓動は、高まってしまうのでした。

ピストルカラテ決死拳 読んだ感想

とにもかくにもガンドーが格好良くて! とにかく格好良くて! わらないなくセンセイによるイラストも素晴らしく、ガンドーの好感度が天井知らずに高まってしまう一冊でした。

改めて【リブート、レイヴン】は名エピソードだと確信しました。ガンドーとシキベの会話は愛おしく、何度読んでもカラス・ニンジャとの邂逅シーンには鳥肌が立ってしまいます。単なるアイサツを交わすだけのシーンなのに、そこに至るまでに築いた物語の展開が素晴らしいのです。ほんとたまらんです。

【リブート、レイヴン】がやや突出しているイメージがある本書ですが、他のエピソードも見逃せないものばかりです。大幅な加筆修正が行われたウルトラハードモードの【シージ・トゥ・ザ・スリーピング・ビューティー】では我らがメンター、モスキート=サンが再登場! ゲス以外の何者でも無いキャラですが彼の紳士的ポエムは一種の清涼剤です。フィーヒヒ!

また、ネコネコカワイイの二人がついにイラスト化されました! しかもカラーイラストです! カワイイヤッター!! ネコチャンとカワイイコ、ほんとカワイイ、カワイイ、カワイイヤッター! カワイイヤッター!! オームーラー! オームーラー!!

そして本書で絶対に見逃せないのがコトダマ空間に関する新たな情報の数々です。【シージ・トゥ・ザ・スリーピング・ビューティー】、そしてついに収録された【グランス・オブ・マザーカース #3】は世界観に関わるかなり重要なエピソードです。

【グランス・オブ・マザーカース】の時系列は第1部にあたり、ニンジャスレイヤーがソウカイヤと戦っていた頃の話です。にも関わらず第2部の今頃になって収録されました。その理由は登場キャラクターを見れば納得出来るのですが、同時に唖然としてしまいます。ナンデ? あのキャラがここで登場するのナンデ!?

コトダマ空間とは一体何なのか?

過去と未来へ斜めに交差するコトダマ空間、その謎に関わる重要なピースは揃いつつあります。キャラクターやストーリーが抜群に面白いニンジャスレイヤーですが、やはり壮大な世界観にこそ私は大きな魅力を感じます。

コトダマ空間の無限な広がりを前にして、ニンジャスレイヤーに対する期待や想像はどこまでも際限なく膨らんでしまうのでした。