本書【聖なるヌンチャク】はニンジャスレイヤー第2部の第4巻です。第1部も含めれば8冊目の書籍となります。

8冊も書籍を読んでいる時点で十分にニンジャスレイヤーのファンと言えるかもしれませんが、本書を読んだことで私は本気でファンになりました。これは本気でヤバイ本です。もしこれから本書を読むという方がいらっしゃったら覚悟をしていただきたい。何の覚悟か? むろんNRS(ニンジャリアリティショック)である。

次々と明かされる古代ニンジャ文明の真実や神話級ニンジャの存在、ニンジャ大戦の最終決戦バトル・オブ・ムーホンの結末、ヌンジャとは?

ダークニンジャの背負う呪い、ナラク・ニンジャの怒り、銀の鍵、そしてピンクの光……。怒濤の勢いで流れ込むニンジャ真実を前にして、私のニューロンは限界を超えて理解を拒みました。

アイエエエ!!!

NRSの発症と共に私は心の底から叫ばずにはいられなかったのです。誰だよ! ニンジャスレイヤーがネタ小説とか言った奴! 誰だよアイエエエの小説とか言った奴!

聖なるヌンチャク 掲載エピソード

聖なるヌンチャクには以下のエピソードが収録されています。リンク先は全て【ニンジャスレイヤー Wiki*】の該当エピソードのページです。

カース・オブ・エンシェント・カンジ・オア……(Curse of Ancient Kanji or …)

システム・オブ・ハバツ・ストラグル(System of Habatsu Struggle)(書籍限定)

ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション(Defusion Accumulation Reborn Destruction)

……ザ・シークレット・オブ・ダークニンジャ・ソウル(… the Secret of Darkninja Soul)

アウェイクニング・イン・ジ・アビス(Awakening in the Abyss)

シャドー・コン(Shadow-Con)

今回はこの中から【ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション】をご紹介したいと思います。

……と、その前にピンクなあの人をご紹介しておきましょう。

ザ・ヴァーティゴ=サンとは

出典:ニンジャスレイヤー公式 ニンジャ名鑑より

皆さんご存じピンクでいかしたカッコいい奴、ザ・ヴァーティゴ=サンだ! エ、知らない? そんなぁ……。

知らない方のためにご紹介すると、ザ・ヴァーティゴ=サンとは主に小説本編外で作品の解説や読者からの質問に答えてくれるガイド的なキャラクターです。書籍では第2巻【ネオサイタマ炎上 2】の巻末から登場し、読者からの質問を募集していました。そして第4巻【ネオサイタマ炎上 4】から【インタビュー・ウィズ・ニンジャ】という企画ページが始まり、読者からの質問にザ・ヴァーティゴ=サンが答えてくれています。

【ネオサイタマ炎上 4】p590より巻末の質問コーナーのページ画像。ザ・ヴァーティゴ=サンが読者からの質問に答えてくれるぞ!
ザ・ヴァーティゴ=サンが読者からの質問に答えてくれるぞ!
【ネオサイタマ炎上 4】p590より巻末の質問コーナー

気さくなザ・ヴァーティゴ=サンは親しみやすく、それでいて質問には割と真面目(一部除く)に答えてくれています。読者としてはニンジャスレイヤーの世界観を知るための手助けになることでしょう。私自身、書籍を読み進める上でとても参考にしていました。

書籍派にとっては巻末企画の一環として採用された解説キャラクターといった感じですが、ザ・ヴァーティゴ=サンはネット上にも出没しています。

その初出はツイッターのニンジャスレイヤー公式アカウントのフォロワー数が4643人を突破した記念に【ザ・インタビューズ】というサイトに現れたアカウントです。因果律無視ニンジャを名乗るザ・ヴァーティゴ=サンは読者からの質問に次々と答えていきました。

ザ・インタビューズ ザ・ヴァーティゴ=サンのアカウントページ

ザ・インタビューズは2016年2月15日にサービスが終了しました。ショッギョ・ムッジョ!

その後も小説本編のツイッターアカウントを乗っ取ったり、【ask.fm】にアカウントを作ってみたり、新たにツイッターアカウント【@the_v_njslyr】も始めてみたりと、ネット上でも盛んに活動しながら読者との交流を続けています。

読者との距離がもっとも近いキャラクターであり、読者からの質問に対する回答には作品の世界観に関わる重要なものも多く見られます。ニンジャスレイヤーを語る上で決して無視が出来ないキャラクターと言えるでしょう。しかし神出鬼没なキャラクターなので全ての活動を追うのはなかなか大変です。下記に掲載するリンクにある程度まとめられてはいますのでご参考までに。ただ、重大なネタばれも多数ありますので閲覧には気をつけてください!

ザ・ヴァーティゴ=サン ニンジャスレイヤー Wiki*

ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション

ザイバツとの戦いが激しさを増す中、フジキドはシルバーキーと共にネオサイタマへと帰還していました。休眠状態に陥ってしまったナラク・ニンジャを再覚醒させるべく、全ての始まりの地、マルノウチ・スゴイタカイビルを目指します。

一方、ザイバツもニンジャスレイヤーを討つべくマルノウチ・スゴイタカイビルを目指していました。しかし、彼の地はソウカイヤ崩壊後にネオサイタマを支配したアマクダリ・セクトの管轄地域であり、アマクダリも易々とザイバツの侵入を許すわけにはいきません。

そしてマルノウチ・スゴイタカイビル広場で繰り広げられるザイバツとアマクダリの小競り合いの中、一陣の閃光が飛来し!

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このエピソードを読んだときの感情は、ちょっと言葉で表すのが難しいです。

本気で何が起こったのか理解出来ず、わけのわからない展開に気分が悪くなりました。あのページで一回本を閉じましたからね、私。

そのとき初めてザ・ヴァーティゴ=サンの恐ろしさを身をもって体験し、本気で彼のことを気持ちが悪いと思いました。こんなにも気味が悪く得体が知れないキャラクターは初めて見ました。

このエピソードは中盤まではごくごく普通に進んでいきます。フジキドたちは全ての始まりのあの日に起こった真実を見つけ出し、ナラク・ニンジャの存在へと辿り着きます。そこで明かされる真実には身がつまされる思いでしたし、フジキドとナラクの会話には深い感動を覚えます。

ところがザイバツとアマクダリが小競り合いをしているところに突如として異変が訪れます。どこかからともなく謎のニンジャが出現し、ザイバツとアマクダリの戦闘へ乱入してきたのです!

出典:ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション #5より

このシーンは是非、書籍で読んでいただきたい。

ただの文章として描かれるのではなく、書籍のデザイン構成全てを巻き込んでザ・ヴァーティゴ=サンが本編に乱入してくる様は、私にとっては恐怖でしたし驚愕の展開でした。

アイエエエ! こんな登場の仕方ってありかよ! 信じられない! なんだよこのピンクまじできもい!

ほんと心中ではそんな叫び声を私は上げ続けていました。あまりの衝撃に本を閉じて、左右を見渡して何かを確認しましたからね。割と本気で。大丈夫、私は狂ってない。正常だ。

これまでザ・ヴァーティゴ=サンは作品外から物語に参加していました。読者からの質問コーナーなどの解説が主な役割で、その発言も極めてメタ的です。ニンジャスレイヤーは物語の世界であり、原作者がいて翻訳チームがいることも彼は理解していますし、読者である私たちの世界のことも把握しています。しょっちゅうゲームや映画の話をしていますしね。

それが突如として本編に乱入して圧倒的なカラテを見せつけてくるのです。こんな驚愕な展開これっぽっちも想像していませんでした。一体何しにやってきたんだと思っていると、やってきた時同様に突如として消え失せます。何なのこの人。コワイ。

あまりに分けのわからない展開に頭はふわふわと漂い出し、理解が出来ません。このニンジャスレイヤーという物語は一体何なのか、疑問だけが渦を巻いて混乱し始めます。そんな状態の中、本書では世界観の隠された真実が次々と明かされる展開が続くので、もう完全に理解が追いつきません。

そんなとき私のニューロンはスパークしたんだと思います。

あ、ニンジャスレイヤーってめちゃくちゃ面白い。

「ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション」 ニンジャスレイヤー Wiki*

聖なるヌンチャク を読んだ感想

本書で明かされるニンジャ真実の前に私はひたすらに驚愕しました。

次々と明かされる情報に頭の中の整理が追いつきません。これまで散々ネタだと思っていた単語や事象の数々が、リアリティを持って目の前に出現します。そんなバカな話があるかと一蹴してしまえれば幸せなのかもしれませんが、ニンジャスレイヤーという作品の場合はそれらの繋がりが想像出来てしまうところに恐ろしさと、そして面白さがあると私は思います。

「キンカク・テンプルって何だよwww」

「おそらくキンカク・テンプルとは、〇〇な仕組みで、××を目的とし、△△というのが真実だ」

こんな想像がいとも簡単に出来てしまいました。ネタでも空想でもなく、作中で明らかになる真実を繋げて想像することが出来てしまうのです。全てが物語の中で語られるわけではありませんが、朧気ながら物語に隠された真実というものが見えてきます。それが正解かどうかはまだ分かりません。ただ、少なくともキンカク・テンプルといったものがネタでもギャグでもない、何かとても重要なものだと認識することが出来ます。

「じゃあもしかしたらニンジャってのはそう言う意味?」

「じゃあコトダマ空間はあれを意味するわけか!」

「あ、ザイバツがやろうとしていることはこういうことなのか! なんてこったい!」

次々と頭の中で伏線が繋がり始め、ニンジャスレイヤーの世界観の真実が見え始めてきます。緻密な世界観にはひたすらに驚かされてしまいます。しかし、それだけならよく出来た物語の一つとして片付けられたと思うのですが、それを崩壊させたのがザ・ヴァーティゴ=サンという存在です。

ザ・ヴァーティゴ=サンはいわゆる【第4の壁】を突破出来るキャラクターです。物語の中の世界と私たちの現実世界の両方を認識しており、両者に影響を及ぼすことが出来るメタ的なキャラクターです。それゆえに作品と読者の間を取り持ち、読者からの質問に答えたり作品の宣伝なども行っています。便利と言えば便利なキャラクターですし、他の作品にもこういったキャラクターは数多く存在することでしょう。

でも、堂々と作品の中に登場するキャラクターはそこまで多くないと思います。なぜなら作品の世界観に大きな影響を与え物語が破綻してしまう恐れが高く、だからこそ、私はザ・ヴァーティゴ=サンが積極的に物語に関わってくるとは思ってもいなかったのでした。

ところが本書においてザ・ヴァーティゴ=サンはやってきてしまいました。その事実だけでも驚愕です。しかし先にも述べた通り、もっとも恐ろしいことはこれらの背景が作中の世界観の中で想像出来てしまうところにあります。ザ・ヴァーティゴ=サンが作中に出現したという意味を是非考えてみるべきなのです。

コトダマ空間です。コトダマ空間で話は繋がります。そしてそこから想像される世界では、私たち読者の存在もまた、コトダマ空間で繋がってしまいます。ザ・ヴァーティゴ=サンの出現によってニンジャスレイヤーの世界と私たちの現実世界は繋がりました。大丈夫、私は狂ってない。正常だ。

コワイ狂人! と思われるかもしれないが安心して欲しい、私は狂ってない。我々読者はハガキの投稿やインターネットを介してザ・ヴァーティゴ=サンと交流出来る。さらにザ・ヴァーティゴ=サンはコトダマ空間を通してニンジャスレイヤーの世界と交流出来る。すなわち、我々読者という存在はニンジャスレイヤーの世界における一つの存在として説明出来るし観測出来てしまうことになる。ろんりてきに導かれる答えだ。

この瞬間、物語と現実の境目が一瞬揺らぐ。目眩だ。一体どこからが物語で、どこからが現実なのか。その境目を定義することが突如として困難になった。アナヤ! 私の言っていることは意味不明かもしれない、だが考えてもみて欲しい。

ニンジャスレイヤーの連載がツイッターで行われているとき、ザ・ヴァーティゴ=サンに対して我々が「アブナイ!気をつけろ!」とツイッターで発言すると、その声はザ・ヴァーティゴ=サンに届く。ザ・ヴァーティゴ=サンの背後に敵が潜んでいれば、たとえザ・ヴァーティゴ=サンが気づいていなくても我々の声で危険を伝えることが出来る!

本書のことではないが現にそういう展開は存在した。それにザ・ヴァーティゴ=サンが使用する武器には読者の声が大いに反映されている。これは読者がニンジャスレイヤーの世界に影響を及ぼした確固たる事実である。ではそこから想像出来ることはなんだろうか? 我々の世界から彼の世界へと影響を及ぼせるのならば、当然その逆はあるのかを考えずにはいられない。

これらはリアルタイムで連載が行われているニンジャスレイヤーならではの面白さだし、ネットとコトダマ空間が接続されたことによって始めて実現したものだ。IRCを前にしてキツネサインを掲げた彼らを私は忘れはしないだろう。

読者参加型小説など生温い表現だ。ニンジャスレイヤーは読者すら作品内の登場人物として飲み込んでしまった。我々は所詮ブッダの手の上で踊るマジックモンキーにしか過ぎないのだろうか? 本書で私はようやくその考えに至った。踊らされているならば、自ら踊るのもまた一興。

この作品が我々の世界へどこまで浸食してくるのか、私は最後まで見届けるつもりだ。

特装版も発売中!

本書はドラマCDが付属した特装版も発売中です!

収録されているエピソードは【シー・ノー・イーヴルニンジャ】と【デス・フロム・アバブ・セキバハラ】で、どちらも第2部序盤の山場であるイグゾーションとの戦いを描いたエピソードです。

ニンジャスレイヤーとイグゾーションの壮絶なるカラテを豪華なドラマCDにしてしまった特装版! ワオッ! これは買うっきゃないね! 急げ!

イグゾーション=サンの名演説は必聴。