祝! ニンジャスレイヤー物理書籍第2部完結! ワッパッパオー!

しかし当サイトのニンジャスレイヤー感想記事は全然進んでいないのでした。早く書かねば! しかしミヤモト・マサシも言っているではないか、『急ぐと死ぬ』と。あれ? ガンドー=サンだっけ?

まあ、さておき。本書【荒野の三忍】はニンジャスレイヤー第2部の第3巻にあたります。第2部【キョート殺伐都市】は全8巻ですのでまだまだ序盤と言えるところでしょう。しかし第2部は物語の山場となるエピソードがそこかしこにあり、前巻の第2巻ではいきなりザイバツのグランドマスターであるイグゾーションとの熾烈な決戦が描かれました。

第3巻となる本書では、第2部を代表するキャラクターたちの始まりの物語となるエピソードが多く、各キャラクターの内面が深く掘り下げられていきます。そしてタイトルを冠するエピソードでは戦いの合間の数奇な出会いを描き、ライバル同士が一時的に共闘するという胸の熱い展開が繰り広げられていくのです。

それではニンジャスレイヤー第2部キョート殺伐都市より、【荒野の三忍】の紹介と感想を書いていこうと思います。

荒野の三忍 掲載エピソード

荒野の三忍には以下のエピソードが収録されています。リンク先は全て【ニンジャスレイヤー Wiki*】の該当エピソードのページです。

ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス(Blade-Yakuza Vacant Vengeance)

ビヨンド・ザ・フスマ・オブ・サイレンス(Beyond the Fusuma of Silence)

チューブド・マグロ・ライフサイクル(Tubed Maguro Lifecycle)

フィジシャン、ヒール・ユアセルフ(Physician, Heal Yourself)

ナイト・エニグマティック・ナイト(Night Enigmatic Night)

フェル・アスリープ・イン・ザ・ムービング・コフィン(Fell Asleep in the Moving Coffin)(書籍限定)

スリー・ダーティー・ニンジャボンド(Three Dirty Ninja-Bond)

今回はこの中から【ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス】と【スリー・ダーティー・ニンジャボンド】についてご紹介したいと思います。

ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス

次々とキョートのヤクザクラン事務所が何者かに襲われる事件が発生。被害に遭った者は皆一様に、執拗なまでにケジメされた死体で発見されました。間違いなくニンジャの仕業です。

そしてその夜、エルダーツチノコクランとヨロシサン製薬の秘密会合が開かれていた料亭に一人の男が乱入してきます。

「ドーモ。ケジメニンジャです。貴様らをケジメする」

個人的にこのエピソードは第2部の中でも上位に位置するくらい大好きなエピソードです。エピソードの主役であるケジメニンジャが最高に格好良く、彼が追い求める願いには感動すら覚えてしまいます。

このエピソードの主役は一人のクローンヤクザです。

クローンヤクザと言えばこれまでの物語の中で散々雑魚キャラとして扱われてきました。敵兵すらクローンで量産して使い捨てていく様はニンジャスレイヤーという作品の一つの象徴であり、暗黒社会が行き着いた一つの恐るべき形です。しかし、どこか憎めないアトモスフィアも持ち合わせ、なんかカワイイ印象もある奴らです。

出典:コミカライズ【ニンジャスレイヤー】ラスト・ガール・スタンディング(ニ)より

「「「ザッケンナコラーッ!」」」と叫びながら次々と襲いかかってくるクローンヤクザ。しかし、ニンジャの戦闘力の前では所詮雑魚キャラです。ゴミのごとく軽々と倒されていく姿はちょっとかわいそうに思えてしまいます。

どこかコミカルな姿で描かれ、ニンジャスレイヤーという作品を象徴する代表的なキャラクターと言えるでしょう。

ところがこのクローンヤクザに突如としてニンジャソウルが憑依し、自我を持つニンジャとして生まれ変わってしまった個体が現れます。ケジメニンジャと名乗る彼は、自己の存在意義を知るためにクローンヤクザ製造に関わる者たちを次々に襲い始めるのでした。

出典:ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス #4より

ニンジャとなったクローンヤクザは自我を持ち、自分の存在意義を探し始めます。都合のいい存在として量産されているクローンヤクザ、そんな彼がこの世界に生まれた意味は何なのか、同じ顔を持つ人間だらけの中で己が己たらしめているものは何なのか、その答えをケジメニンジャは追い求めていくのでした。

勘違いしてはいけないのはニンジャスレイヤーはかなりシリアスな物語というところです。トンデモな世界観が先行してネタ小説と思われがちですが、内容や扱うテーマ自体はかなり真面目です。

クローンヤクザはネタ小説と受け止められる典型的な存在だと思います。繰り返し描かれる中で、私自身それを疑問に持たずに当たり前のこととして受け入れていました。多くの読者の方々もそうだと思います。だってねぇ、アサルトクローンヤクザとか、エリート親衛クローンヤクザだとか、まさかのサイボーグ野球ヤクザまで出てくるし、光合成クローンヤクザとかもはや意味不明ですよね。どうみてもネタ小説だよコレ!

ところがケジメニンジャという存在によって、これまで積み上げられてきたクローンヤクザに対する理解やネタ感情といったものがガタガタと崩壊し始めます! クローンヤクザとは何なのか、彼らの自我はどうなっているのか、彼らは何のために生まれ、何のために死なねばならないのか。ケジメニンジャという一人の男を通して、自己の存在というそうそう答えが得られない問題へとエピソードは突き進んでいくのです。

ケジメニンジャが求めるものは簡単に辿り着くものではなく、彼の未来にあるものはひたすらに悲しく切ないものです。それでもなお突き進む彼は最高に格好いいキャラクターであり、畏怖や尊敬すら覚えてしまいます。ニンジャスレイヤーとかいう主人公と戦う場面では思わず応援してしまうほどでした。

ネオサイタマの死神なんかと戦わないで欲しい! なんとか生き残って欲しい! ニンジャスレイヤーなんかぶっ殺しちまえ! ウィーピピー! ……ほんとそんな気分だったのです。

彼の最後は幸せだったのかは分かりません。でも、ひとひらの救いはあったと私は思います。

「ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス」 ニンジャスレイヤー Wiki*

スリー・ダーティー・ニンジャボンド

ここは死の荒野セキバハラからほど近い貧相な村、オタカラ村。

ある日、この小さな村にサヴァイヴァー・ドージョーを名乗る盗賊団が襲撃を仕掛け、村はアビ・インフェルノ・ジゴクと化しました。

村長の孫娘ワタアメは命からがら村を脱出し、近隣のワンダラス町へと辿り着きます。そこで彼女は偶然にもゾンビーニンジャのジェノサイドに出会い、彼に助けを懇願するのでした。さらにサヴァイヴァー・ドージョーという言葉に反応した一人の網笠男も旅に同行することになります。

二人の怪しいニンジャと一人の若い娘という奇妙な組み合わせの旅人たち。彼らは荒野を進み旅を続けますが、川に辿り着いたところで上流から流れてくる一人の男を発見するのでした。

「ゴホッ、……。……ドーモ……ニンジャスレイヤーです」

このエピソードは第2部の中でもやや異彩を放っており、読者の中からは劇場版ニンジャスレイヤーなどと表現されることもあります。言い得て妙ですが私も実際そんな感想を持ちました。映画館で見たい一編です。

本書のタイトル【荒野の三忍】はこのエピソードのことを意味しており、荒野を旅する三人のニンジャたちが主人公として登場します。すなわちっ!

ジェノサイド

フォレスト・サワタリ

ニンジャスレイヤー

これまで幾度も互いに殺し合ってきた主役級キャラクターが夢の大競演! 一触即発のアトモスフィアの中で互いに協力して戦うドリームバトルの実現だっ! ゴウランガ!

出会って早々殺し合いを始めようとする三忍ですが、気丈にも彼らの間に割って入ったのがこのエピソードのヒロインであるワタアメでした。

出典:スリー・ダーティー・ニンジャボンド #2より

ワタアメの行動で三忍は一時的に休戦し、彼女を守りながら共に旅をする仲間となります。これまで殺し合いしかしてこなかった三忍たちの会話は愉快で、連携して(?)敵と戦う展開には胸が熱くなってきます。まさに劇場版!

ニンジャスレイヤーがサワタリの作ったスシを食べたり、ジェノサイドと普通に会話してたり、これまでの三忍たちのことを考えると絶対にあり得ないような光景が繰り広げられます。それだけでも面白いのに、ラストバトルでは全員が参戦してボスと戦うというめちゃくちゃ燃え上がる光景が見られるのです。こんなのが見られるのはこのエピソードだけです!

絶対にこれ以外のエピソードでは実現しないような展開はまさに必見です。その豪華っぷりもありこのエピソードは極めて人気が高く、ファン投票による【コミカライズ化して欲しいエピソード】で堂々の第一位になる快挙を成し遂げました。

そう! この【スリー・ダーティー・ニンジャボンド】はコミカライズが決定しています!

まだ連載は開始されていませんが今から楽しみで楽しみで仕方がありません。このエピソードがマンガで読めるなんて、ほんと幸せです!

「スリー・ダーティー・ニンジャボンド」 ニンジャスレイヤー Wiki*

なおこの記事を書いたやつはマグロ・サンダーボルトに票を投じたそうな。荒野の三忍に負けた。ザンネン!

荒野の三忍 を読んだ感想

先にも書いた通り、本書は第2部を代表するキャラクターたちの始まりの物語が多く描かれています。【ビヨンド・ザ・フスマ・オブ・サイレンス】【フェル・アスリープ・イン・ザ・ムービング・コフィン】の両編は、第2部どころか恐らくニンジャスレイヤー全編に渡って最重要キャラクターの一人であるシルバー・キーことカタオキの物語です。どこかふぬけた間抜けアトモスフィア漂うカタオキは以後大きく物語に関わることになります。

そしてシャドーウィーブことナブナガ・レイジの登場回【ナイト・エニグマティック・ナイト】は珠玉の一編です。彼の心の闇も、世界の闇も、そしてほんの束の間に垣間見た希望も、全てが素晴らしく醜くも美しい物語です。ここから、彼の物語が始まりました。

レイジはザイバツという敵組織の中にあって最も応援したいキャラクターです。闇に包まれたこの世界の中で彼がどう生きていくのか、何を選択していくのか、第2部の中でも大きなテーマの一つとして描かれ目が離せません。出来ることなら彼には幸せになって欲しいと思うのですが、彼は闇を見過ぎ、闇に浸りすぎてしまっているようにも見えてしまいます。

第2部は総じて魅力的なキャラクターが非常に多いと思います。群像劇というスタイルにおいてキャラクターが増えていくのは必然のことですが、一方で一人一人の存在感が薄まってしまっては意味がありません。

その点、エピソード単位で物語を明確に区切り時系列をずらすこの作品は全体的にテンポが良く、キャラクターの個性が際立っています。文量自体は相当あるので全部を読破するのはなかなか骨が折れるかもしれません。しかし、キャラクターという視点に立てば、登場するエピソードを読むだけで理解が出来るというのは素晴らしいところだと思います。

例えば、私はケジメニンジャがすごく好きです。でも彼が主役を張るエピソードは今のところ本書の【ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス】一編のみです。今後もちらりと登場することはありますが、出番はほとんどありません。

それでもなお、この一編が与えた衝撃は結構大きいものでした。これまでクローンヤクザというネタ要素が作中のあちこちに予め散りばめられていたという点も加わり、とても印象深いキャラクターとして心に刻み込まれたのです。是非、彼が再び活躍するエピソードを読んでみたいものです。

個性という点では【チューブド・マグロ・ライフサイクル】も見過ごせないエピソードです。いや、もう、個性という点では、セントール=サンは、ぶっちぎりだと思うんだ。もう、色々と、このエピソードは衝撃的でした。しばらくはセントール=サンが頭から離れませんでしたしね。ニィイイイーッ!