アニメ第2期の最終回も無事終えたログ・ホライズン! 小説本編も第9巻が先日刊行されました。待ちに待った第9巻です。ようやくログホラ海外編が書籍化です。長かったです。本当に長かった!

私がログホラを読み始めた頃、ちょうどWebでは海外編の竜吼山脈が連載していました。リアルタイムで更新されていくストーリーは毎回驚きの連続で、ドキドキと興奮していたことを覚えています。ログホラ海外編は私にとって思い出深いエピソードだったりします。

待ちに待った一冊です! それではログ・ホライズンの第9巻、【カナミ、ゴー! イースト!】の感想と紹介を書いていきたいと思います。

第9巻のあらすじ

中国サーバー管轄下にある地域、アオルソイ。現実世界でのカザフスタンに位置するこの地域は人口も少なく、荒れ果てた荒野がどこまでも続き、地平線の果てには天高くそびえる山脈が連なっていました。

人の気配など全くない廃墟の街の中、レオナルドは一人途方に暮れていました。突如発生した大規模戦闘のイベントに巻き込まれ、彼の命運は尽きかけていたのです。

エルダー・テイルのプレイヤーが突如として謎の世界に連れ込まれた事件、通称【大災害】。北米サーバーで事件に巻き込まれたレオナルドは六・〇一食糧暴動をきっかけに故郷のビッグアップルを捨てました。現実から目を逸らし、たった一人で妖精の輪へと逃げ込んだ彼が辿り着いた場所こそ、アオルソイの無人の荒野だったのです。

全てを諦めかけていたレオナルドでしたが、突然どこからかカナミと名乗る女性が現れます。

カナミはエリアス=ハックブレードコッペリアを引き連れて日本を目指していました。レオナルドの危惧や不安をよそに、カナミはレオナルドを誘って常識外れの戦いで大規模戦闘を突破してみせます。道中、KRも参加して珍妙なパーティーの旅が始まりを告げました。

目指すは遥か東の地、日本! 放蕩者の茶会の元リーダー、カナミ率いるパーティーは一癖も二癖もあるメンバーばかりでトラブルが後を絶ちません。しかしトラブルの裏には何やら新たな敵の気配もあり……。

ようやく書籍化!

エルダー・テイルは全世界規模でプレイ人口2000万人を超えるオンラインゲームという設定です。当然ながら大災害に巻き込まれたのはシロエたち日本人だけではありません。

これまでは日本サーバーが物語の中心であり、海外サーバーの事情にはほとんど触れられていませんでした。本書はログ・ホライズンの番外編にあたり、シロエたちの物語とは直接的には関係がありません。物語の舞台は海を超えて中国サーバーのアオルソイへと移り、登場キャラクターも一新されます。

本書は元々【ログ・ホライズン海外編 竜吼山脈】と題して、第5巻【アキバの街の日曜日】と第6巻【夜明けの迷い子】の間にWebで公開されていました。しかし大人の事情やら何やらあったようで長らく書籍化はされず、やがてはWebの公開分も非公開になってしまいます。

その後大幅な修正を経て、今では無事に公開されています。

074 カナミ;ゴー・イースト 小説家になろう

本来は第6巻になる予定だったのがこの海外編です。本編とは違い、番外編にあたるものなので第9巻という位置でも問題は何もないのですが、個人的にはやはり第5巻の後に読むのが一番面白いと思っています。第5巻までのログホラ世界を楽しんだ上で読む海外編の内容は、本当に衝撃的に感じるはずです。

ついに登場した彼女

本書ではこれまで何度も語り草として登場していた【放蕩者の茶会】の彼女がついに登場します!

人間台風カナミ。アニメ第2期の最終回には度肝を抜かされましたね。一方でカナミらしさにも納得してしまいます。橙乃ままれ公式サイト キャラクター紹介よりhttp://tounomamare.com/archives/535
人間台風カナミ。アニメ第2期の最終回には度肝を抜かされましたね。一方でカナミらしさにも納得してしまいます。
橙乃ままれ公式サイト キャラクター紹介より
http://tounomamare.com/archives/535

名前はカナミ。茶会のリーダーとしてシロエたちを巻き込んで大暴れしていた張本人です。2年前にゲームを引退したために茶会は解散しましたが、その後、彼女は海外へと移り住んで西欧サーバーでゲームを再開していました。そのタイミングで彼女も大災害に巻き込まれていたようです。

カナミは大災害の真実を探るため、また、旧知の仲間に会うために西欧から日本を目指して旅をしています。その途中でコッペリアやエリアス、そしてレオナルドやKRたちと出会ってを巻き込んでいくのでした。

本書はこれまで具体的な描写がなかったカナミの暴れっぷりが見事に吹き荒れる内容となっています。噂に違わぬ人間台風な彼女の規格外っぷりは半端じゃありません。シロ君には同情を禁じ得ない。

天真爛漫と言えば聞こえはいいですが言動は突拍子もなく、思ったことをすぐさま口にする傍若無人な態度には頭を抱えたくなります。しかし性格は明るく、常に前を向いて輝いているキャラクターです。物事の本質や正解を理屈ではなく、その性格と本能で即座に嗅ぎ分ける様には圧倒的なカリスマが漂います。

とにかく魅力的なキャラクターで、ログホラの中でもトップクラスに大好きなキャラクターです。けたけたと笑いながら廃人クラスのレオナルドよりも高い戦闘力を誇るカナミには底知れなさを、優しい微笑みでレオナルドを諭そうとする表情には思慮深さを、そして溢れ出る怒りでエリアスを肯定するシーンには彼女の力強さを感じました。彼女の起こす行動の一つ一つが魅力的で、楽しくて仕方がないのです。

第9巻の感想

待ってました海外編!

海外編は本当に大好きだったので待ちに待ちました。Webで公開された初期のバージョンからは大幅な改訂がなされていますが、大まかなストーリー自体に変更はありません。主にキャラクターの設定にかなり手が加えられています。

個人的にはKRの性格がだいぶ軽薄になっているのが気になりました。以前の冷静沈着で落ち着いているKRの方が私は好きです。クライマックスで本性現す辺りが「やはりこいつも茶会の一員か!」と強く感じさせますし、その後のブラックドラゴン戦がべらぼうに格好良く思えるのですよね。

しかし、ガーたんの大幅加筆で全てを許した。いやむしろKR許すまじ。ガーたんといちゃいちゃしやがってこの野郎! ガーたんかわいいよガーたん。

今でこそ海外編の内容は特段驚くべきものではないのかもしれません。典災という新たな敵や口伝の秘密、冒険者と大地人の関係など、これまで本編の第2部で散々語られてきました。カナミの無茶っぷりもエリエリの常識外れも、すんなりと受け入れてしまう土壌がすでに出来てしまっていると言えるでしょう。

ですが、第1部までしか読んでいなかったあの頃の私にとってはとてつもない驚きの連続でした。第1部でゲームの世界を否定しておきながら、エリエリやコッペリアというゲームの設定をフル活用したキャラクターたち、そしてまだ口伝という言葉すらなかったときに現れたカナミやKRのぶっ飛んだ戦い方、ただひたすらに「そんなのありかよ!」と心の中で叫び続けていました。

通常なら変人枠であるレオナルドが一番の常識人として描かれるパーティーはまさに異常です。しかしそうかと思えばやっぱりレオナルドもぶっ飛んでいるキャラクターなので、「本当にこのパーティーはどうしようもないな!」と愉快な気分になると同時に目を覆いたくなってしまいます。……アニメ最終回でまさかの追加メンバーでガクブルが止まりません。

海外編はカナミという核弾頭級のぶっ壊れキャラクターがいるにも関わらず、パーティーメンバーがこれっぽっちも霞んでいないところに面白さがあると思います。下手したらカナミが最初から最後までおいしいところをかっ攫えるにも関わらず、カナミに負けないくらい、いやそれ以上に他のメンバーが大活躍し最高の見せ場を作り出しているのです。

特に主人公であるけろナルド……、もといレオナルドは最高にかっこいいヒーローです。当初公開された設定と書籍ではやや相違があるのですが、彼の熱い叫びやヒーローとしての覚醒は何も変わらずに熱いものがこみ上げてきます。そして注目したいのが彼の口伝【パラレル・プロット】の存在です。

先にも述べた通り、元々この海外編は第5巻と第6巻の間に公開されたものです。第5巻完結の段階では未だ口伝に関する詳細情報は皆無であり、第6巻【夜明けの迷い子】でアカツキが習得した【シャドウ・ラーク】の解説を待たねばなりません。ですから本来、口伝の種明かしを物語上で最初にしたのはレオナルドになるのです。

シロエが第4巻で開発した魔法、濡羽が第5巻で使ったスキル、そしてこの海外編でカナミが見せた異常なまでの戦闘力とKRの隠し球など、これらの口伝に関する種明かしがレオナルドによって論理的に解説されます。全てが判明するわけではありませんが考え方のスタートラインがはっきりとします。つまり、既存の方法に囚われない柔軟な発想と個人の努力の先に自分自身のスタイルがあるという口伝の真実です。

種明かしさえされてしまえば実にくだらないことです。自分の思い込んだ常識などに囚われず、自分自身の目で真っ直ぐに見つめ、そして考え、可能性を模索することによって強さは生まれるのです。そのことに気がつくまでレオナルドは一歩ずつ歩みを進めていきます。彼のその成長こそが、この物語最大の見所なのだと私は思います。

まあ、おそらくカナミはただの本能で答えに辿り着いているんですけどね。だからこそおそろしい。

最後に

ログ・ホライズンのアニメ第2期も無事に終了しました。

アニメ後半では原作小説の内容を先取りする形でストーリーが進むという驚きの展開を見せました。少し駆け足気味かなと心配にもなりましたが、一方でログホラのゴールも薄ぼんやりと見えてきた展開には感動もしてしまいました。

結局、物語を大きく動かしたのはカナミでした。彼女とシロエの会話にこそ、ログ・ホライズンという作品の輝きが宿っていたように思えます。たぶん、シロエ自身は心の底では気がついていてもたくさんのものを抱え過ぎて答えが出せなかったのではないでしょうか。その背中を何でも無い当たり前のものとして優しく押したカナミが素敵でした。

カナミが見た夢の果てに何が待つのか、シロエたちが受諾したクエストの先にどんな風景が待っているのか、今からすごく楽しみで仕方がありません。