さて、引き続き橙乃ままれの『ログ・ホライズン』を紹介していきます。

主人公のシロエは<円卓会議>を設立し、アキバの街に自治機構を作り上げました。そしてプレイヤーたちは謎の異世界がゲームの世界ではないことを認識して、この世界で生きていくことを決意します。

このときにシロエが示したことは大きく二つ。

一つは、この謎の異世界は<エルダー・テイル>を基盤に持ちながらも、独自の物理法則が成り立っている世界だということです。なぜならば、本来のゲームには存在しないアイテムの製作に成功したからです。

そしてもう一つが、<大地人>と呼ばれるNPCたちはAIでプログラムされた存在ではなく、自意識を持って活動をしているということでした。彼らには自意識があり、目的を持ってこの世界で生きていることをシロエは示し、<大地人>との対応を誤れば取り返しのつかないことになるとプレイヤーたちに説いたのです。

<円卓会議>設立後、プレイヤーたちは<大地人>との関わり方を改めて考え行動することになります。それは言い換えれば、この異世界でどう生きていくのかということに他なりません。

サブタイトルの通りにゲームは終わりを告げ、プレイヤーたちの本当のサバイバルがここから始まります。

<円卓会議>が設立されたことでプレイヤーたちは互いに協力関係を築くことが出来ました。そして<円卓会議>の一席を務めるギルド、<三日月同盟>の提案で初心者プレイヤーを支援する強化合宿が行われることになります。

<エルダー・テイル>を始めたばかりの初心者はわけも分からない状況で<大災害>に巻き込まれ、頼る人もいない中で悪徳ギルドに利用されたりもしました。そんな彼らを支援するべく、<円卓会議>の面々が協力して初心者を支援することになったのです。 

一方、<円卓会議>の代表を務める<D.D.D>のギルドマスター『クラスティ』、アキバの街で最大規模の生産ギルド<海洋機構>総支配人『ミチタカ』、そして<記録の地平線>のギルドマスター『シロエ』の3人は、<エターナルアイスの古宮廷>を訪れていました。

ミチタカとクラスティの画像 橙乃ままれ公式ウェブサイト http://mamare.net/ より

左がミチタカ 右がクラスティ 
<円卓会議>の一席を務めるギルドのマスターたち。
シロエに負けず劣らずの実力者で、今後の物語にも大きく関わる重要な人物。
 橙乃ままれ公式ウェブサイト http://mamare.net/ より

ゲーム時代にNPCとして登場していた人々はプレイヤーである<冒険者>と区別するように<大地人>と呼ばれていました。

町人、農民、商人、貴族など、彼らは彼らで<エルダー・テイル>の世界で役割が与えられ、生活をしていたのです。当初プレイヤーたちは彼らのことを単なるNPCとしか認識していませんでしたが、彼らにも自意識が存在するごく普通の人々であることを理解し態度を改めます。

そのことを立証するかのように<円卓会議>が設立されて一月が過ぎた頃、<自由都市同盟イースタル>から一通の書状が届きます。

<自由都市同盟イースタル>とは、現実世界でいうところの東日本を統治している同盟です。同盟にはおよそ20ほどの貴族領や都市が参加し、プレイヤーたちが集っているアキバの街もこの領域の中に存在します。

主人公のシロエを含む<円卓会議>の数名は、<自由都市同盟イースタル>の領主会議に参加するために<エターナルアイスの古宮廷>へと出向くのでした。

『ログ・ホライズン』の本当のサバイバルがここから始まります。プレイヤーたちは<大地人>たちとの政治や経済を巡る問題に巻き込まれ、この謎の異世界で生きるための戦いが始まっていくのです。

第3巻と第4巻では、この二つのストーリーが同時進行していきます。

初心者プレイヤーを鍛える強化合宿では、彼らの成長を通して<エルダー・テイル>のシステムがより詳しく描写されていきます。オンラインゲームを経験したことがある人にとっては身に覚えがあるような出来事が続き、初心者たちが悪戦苦闘している姿は微笑ましいものです。

オンラインゲームの楽しさや難しさが垣間見え、思わずニヤリとしてしまいます。

そして一方、<円卓会議>の代表団と<自由都市同盟イースタル>との交渉は緊張の連続となります。この会議を通して見えてくるものは、<大地人>たちから見た<エルダー・テイル>の世界に他なりません。今後の物語ではこの<大地人>たちが重要なキャラクターとして物語に厚みを持たせます。

ここで<大地人>が登場するところに『ログ・ホライズン』の面白さがあります。ゲームの世界に囚われたプレイヤーたちだけが物語の主役なのではなく、ゲームの世界に登場するNPCたちも主役として物語に絡んでくるのです。

橙乃ままれはこれと似た手法を『まおゆう』で使っています。

物語の中で戦っているのは何も主人公たちだけではありません。主人公たちを見ている人々が必ず物語の世界にはいます。物語の世界の中に暮らす人々の数だけ、彼ら一人ひとりの冒険があるはずなのです。しかし一般的な物語では彼らの冒険が語られることはあまりありません。

橙乃ままれはそんな物語の隅にいたようなキャラクターにもスポットライトを当てていきます。それも絶妙なタイミングで現れてくるので物語に大きなインパクトを与えるのです。

今までさらりと流していたような、ほんの一文描かれていただけのような、そんな小さな小さな伏線が少しずつ集合を始め、あるとき一気に大爆発を起こします。読者が予想出来ていないところで、それまで物語の隅にいたようなキャラクターが最前線に登場して走り始め、主人公をも超えるような活躍をするのです。

橙乃ままれの描く物語では全てのキャラクターが主人公だと言えます。一人ひとりのキャラクターが輝きを持っているからこそ読んでいて心地が良く、人の可能性や夢、あるいは希望といったものが物語の中に溢れているのです。

『ログ・ホライズン』においてもそれは顕著であり、だからこそ私はこの物語が好きなのです。

ルンデルハウスの画像 橙乃ままれ公式ウェブサイト http://mamare.net/character/1030/ より

初心者の強化合宿に参加したルンデルハウス。
お調子者でナルシストで熱血漢な初心者<ソーサラー>。
彼の存在が『ログ・ホライズン』の“ゲームの終わり”を象徴しているように感じて仕方がありません。読者は第3巻で彼の正体を薄々感じ、第4巻でそのカタルシスは見事に昇華される。
橙乃ままれの真骨頂なキャラクター。
主人公たちに比べて出番が少ないにも関わらず、キャラクター人気投票で堂々の第5位!
橙乃ままれ公式ウェブサイト http://mamare.net/ より

第3巻では数多くの<大地人>が登場し、<冒険者>であるプレイヤーたちと<大地人>の関係性が中心的に描かれます。それは読者に、この物語が単なるゲームのサバイバルに終わらないことを示し、『ログ・ホライズン』の物語の広さを実感させます。

そして続く第4巻では『ログ・ホライズン』第1部最大の見せ場が訪れます。シロエが行使する一つの魔法が、この『ログ・ホライズン』という物語に決定的な一石を投じることになるのです。

その瞬間、私はこの物語が持つ無限の可能性を想像しました。

今後物語がどう転がっていくのか、もはや予想することも難しく、続きが楽しみで楽しみでしょうがないのです。