前回に引き続き橙乃ままれの『ログ・ホライズン』を紹介していきます。

第4巻でプレイヤーたちはゴブリン族の大侵攻を阻止し、<アキバの街>と<自由都市同盟イースタル>の間には平和条約が結ばれ友好関係が築かれました。<アキバの街>は<冒険者>と<大地人>が共に手を取り合う街として、新たな第一歩を踏み出したのです。

そして本書第5巻で『ログ・ホライズン』の第1部が終了します。

突如として異世界に囚われたプレイヤーたちの物語はここでひとまずの落ち着きを見せます。シロエが設立した<円卓会議>によって治安は守られ、<大地人>との友好関係を構築したことで<アキバの街>に平穏が訪れたのでした。

つかの間の休日を楽しむプレイヤーたちですが、依然として元の世界への帰還方法は分からず彼らの先には不安と闇が広がっていることに変わりはありません。

だからこそ、彼らは一日一日を精一杯生きているようにも私には感じられます。賑わいを取り戻した<アキバの街>には彼らの精一杯が満ちているように思えるのです。

第5巻は<アキバの街>で行われる<天秤祭>がストーリーの中心となります。

初の大規模戦闘も終了し<冒険者>と<大地人>の友好関係が築かれたことで、プレイヤーたちには一時の平和な日常が訪れます。異世界に囚われてから怒涛の日々を送っていたプレイヤーたちもようやく一息入れられる状況になったのでした。

そこで生産系のギルドが中心となって<アキバの街>でお祭りが行われることになります。

それが<天秤祭>です。

『ログ・ホライズン』はストーリー性もさることながら魅力的なキャラクターたちも見所のひとつです。ここまでの物語では緊張の連続の中でそれぞれのキャラクターが描かれていましたが、ようやく訪れた休日の日々にキャラクターたちの素の表情を垣間見ることが出来ます。

本書では主人公のシロエに思いを寄せるヒロインたちにもスポットライトが当たり、彼女たちの恋愛模様が描かれます。メインヒロインである“アカツキ”に、第2巻でシロエによって救われた初心者プレイヤーの“ミノリ”、二人ともお祭りを機にシロエとの交流を図って悪戦苦闘を繰り広げるのです。

ミノリとアカツキ ログ・ホライズンのヒロインたち 第5巻77、81ページより

左がアカツキ 右がミノリ
共にシロエを慕う少女たち
仲間でもあり恋敵でもあり、その心境は複雑で・・・・・・
第5巻 77ページと81ページより

恋愛や友情、あるいは喧嘩や騒動といった光景は、人々が生きているからこそ見られるものでもあります。プレイヤーたちは生きる気力をなくし、ギスギスとした雰囲気が蔓延っていた当初の街の様相からは想像も出来ないほど、今の<アキバの街>には笑顔が溢れ人々の声が聞こえてきます。

この光景こそ、私が『ログ・ホライズン』を好きである理由のひとつです。どのような苦労や困難、犠牲があったとしても、誰かの行動で誰かが幸せになるという物語が私は好きです。これから先、どのようなことが起こるのかはまだ誰にもわかりません。しかし、シロエによって変革された<アキバの街>は人々の活気で溢れ、彼ら一人ひとりの冒険を想像すると意味もなく楽しくなってしまいます。

シロエが為したことは、本人に言わせれば大したことではないと言うのでしょう。しかし、彼が為したことのすごさは、多くの人々の笑顔と笑い声の中に溢れています。そして彼の周りに集い彼と共に歩む仲間たちも、前を見据えてこの異世界で生きるために戦っているのです。

だからこそ、私はこの『ログ・ホライズン』という物語が大好きです。

多少のトラブルは発生するものの『天秤祭』は無事に終わり、これにて『ログ・ホライズン』の第1部は幕を下ろします。

しかし、物語はすでに第2部へと動き始めています。

祭りの喧騒がまだ残る中、シロエは旧知の人物に会うために一人<アキバの街>を歩いていました。しかし約束の場所に友は現れず、そこに登場するのは一人の女性でした。

シロエの前に現れた女性こそ、今後の物語で最重要のキーを握る『濡羽(ぬれは)』その人だったのです。 

ギルドPlant hwyadenのギルドマスター 濡羽 シロエを誘惑しに現れた ログ・ホライズン第5巻333ページより

ギルドPlant hwyadenのギルドマスター 濡羽
<神聖皇国ウェストランデ>、現実世界の西日本一帯を支配したプレイヤー。妖艶な女性。
シロエを勧誘しに<アキバの街>へと侵入する。
第5巻333ページより

<エルダー・テイル>は全世界規模のオンラインゲームです。<アキバの街>以外にも多くの都市があり、シロエたち同様に多くのプレイヤーが異世界に囚われています。

シロエが<円卓会議>を設立し奮闘していたのと同様、世界中でも異世界に囚われたプレイヤーたちの戦いがありました。

<大災害>から5ヶ月。

シロエたちの暮らすアキバの街は大きく様変わりした。外見こそ以前のままだが、その暮らし方や人々の関係は決定的に変わったのだ。<自由都市同盟イースタル>や<大地人>との関わり方も含め、もはやこれがゲームだとは誰にもいえないだろう。そこまで事態は大きく動いてしまった。

その5ヶ月はこの世界の誰の上にも等しく流れた。

だからこの街が変わったのと同じように、他のあらゆる場所でも変化は当然だ。シロエはそう考える。

しかし、アキバの街の変化には、シロエの意志が影響している。シロエはこの街を変えようと奔走した自覚がある。だとすれば、他の都市の変化にもまた「誰か」の意志が影響を与えているのだろうか? その意志を考えると、シロエは腹の底が重くなるのを感じるのだ。

出典:『ログ・ホライズン 5 アキバの街の日曜日』p.17,18

第2部からは<アキバの街>以外の都市も物語に絡んできます。<アキバの街>は<冒険者>と<大地人>による共同自治の道を選びましたが、全ての街がそのような結果になったわけではありません。

ススキノは治安が悪化し無法都市と化しました。そしてミナミは単一ギルドによる支配が行われ、そのギルドを束ねる人物こそがシロエの目の前に現れた女性、濡羽だったのです。

『ログ・ホライズン』はアニメ化が決定していますが、物語の区切り的にも第1部でアニメは終わると思われます。しかし本編の小説では第2部がすでにスタートしています。

日本サーバーの舞台では、東日本に位置するシロエたち<アキバの街>と濡羽率いる西日本の<ミナミの街>が大きく物語に関わり、Webで連載されている海外編では、ヨーロッパやアメリカ、中国などの情勢が伝わってきて、『ログ・ホライズン』の世界は加速度的に広がっていきます。

どこまでこの物語が広がっていくのか、私は楽しみで楽しみで、仕方がないのです。