先日の記事を書いた後、さっそく『晴れた日は図書館へいこう』の続編を買ってきました。

目当ての本を買うついでにたまたま本屋さんで発見した本シリーズでしたが、想像や期待以上に面白い作品に出会えてすごく幸運でした。元々本書は児童文学で出版されていたものですから文庫化されていなければ出会える確率はもっと低かったはずです。児童文学の棚も時折見たりはしますが、やはり一般書籍の棚の方が私は見る機会が多いです。

 2014年の3月時点ではこのシリーズの続編は本書『晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語』だけのようです。今後続編が書かれることがあるのかは分かりませんが、私は是非続きが読みたいと思っています。すっかりしおりちゃんと雲峰市立図書館の物語が好きになってしまいました。

ストーリー

本書は緑川聖司の小説『晴れた日は図書館へいこう』の続編です。前作に関しても当サイトで記事にしていますのでよろしければこちらも参考にしてください。

 → 【読書感想・紹介】 晴れた日は図書館へいこう 

2010年に単行本として『ちょっとした奇跡ー晴れた日は図書館へいこう(2)』が発売された後、2013年に文庫化されました。その際に題名が、『晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語』へと変更されています。

私は文庫化されたことで本シリーズを知りましたので購入して読んだものは文庫版になります。文庫版では題名の変更以外に、加筆・修正と共に書き下ろし短編が収録されています。

ストーリーは前作同様、本が大好きでいつも雲峰市立図書館へ通っている小学5年生の女の子『茅野しおり』が主人公です。しおりちゃんが図書館でたくさんの本や人々と出会い、時には本にまつわる不思議な謎を解いていくという、図書館を舞台とした日常ミステリの物語です。

物語は終始温かく優しい空気に満ち、読みやすさや心地よさは前作と全く変わっていません。前作で登場した人物たちも本書で再び登場してくれます。

季節は巡り、秋から冬へ

前作の『晴れた日は図書館へいこう』の作中では春から夏にかけての季節が描かれていましたが、本書では秋から冬へと季節は巡っていきます。これで2冊を通して1年間の時が流れたわけです。しおりちゃんももうすぐ6年生。

この季節の巡る描写が作中での時の流れを感じさせると共に、本シリーズを読んでいて心地良い気持ちでほんわかしてくる一つの要因だと思います。春には風が気持ちよく、夏には自転車を漕いで汗をかき、秋には公園で読書を楽しみ、冬には透き通った空気の中で星を眺める、それぞれの季節を存分に楽しんでいるしおりちゃんはとてもかわいらしいのです。そしてどんな季節でもしおりちゃんは図書館へと向かいます。

こんな雪の日に家の中に閉じこもっているなんてもったいないーーわたしは雪に覆われた街を見下ろしながら、心の中で呟いた。

雪の日も、図書館にいかなくちゃ!

出典:『晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語』p.226,227

槍が降ってもしおりちゃんは図書館へ行きそうだ。

『ごめんね』よりも『ありがとう』の方が嬉しいな

本書の第4話『空飛ぶ絵本』というストーリーの中に、とても印象に残ったシーンがあります。

12月のある日曜日、しおりちゃんは母親と一緒に『冬の星座講座』という公開講座に参加する予定でしたが母親が急な仕事のために都合がつかず、代わりに美弥子さんが保護者としてしおりちゃんに付き添ってくれました。

しおりちゃんは美弥子さんが仕事を休みの日なのに付き添ってくれたことを気にかけ、「ごめんね」と美弥子さんに声をかけます。なんと出来た子でしょう!

美弥子さんは気にしないでといった返しをしますが、その後に出てきた言葉に私はじーんときてしまったのです。

「それよりーー」と、美弥子さんが続けた。

「どうせなら、『ごめんね』よりも『ありがとう』の方が嬉しいな。だって、『ごめんね』だと、なんだかしおりちゃんが悪いことしたみたいだけど、『ありがとう』だったら、わたしがいいことをしたみたいでしょ?」

そういって、おおげさに胸を張ってみせる美弥子さんに、わたしは笑いながらいい直した。

「そうだね。美弥子さん、一緒に来てくれてありがとう」

それだけで、なんだか気持ちと足取りが軽くなる。わたしはスキップを踏みかけて、すぐに足を止めた。

「あれってオリオン座かな?」

「どれ?」

「ほら、あれ」

わたしは夜空に明るく瞬く砂時計みたいな星座を、まっすぐに指さした。

出典:『晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語』p.174

こんな言葉がすらっと出てくる美弥子さんが素敵過ぎます。そりゃあこんなお姉さんが身近にいたらしおりちゃんもまっすぐの良い子に育つってもんですよね。

『ごめんね』よりも『ありがとう』の方が嬉しいな。

本書を読んでいたとき、このシーンの言葉にすごく感動してしまいました。たぶん私もしおりちゃんの立場だったら相手に対して『ごめんね』と言うと思います。

別にこのシチュエーションでしおりちゃんが『ごめんね』と言うことは何も間違いではないはずです。むしろ相手を気遣うことが出来たからこその言葉でしょう。でも美弥子さんは、『ありがとう』と言ってくれればもっと嬉しいと言ってくれたのです。ちょっと出来すぎなお姉さんじゃない!?

ちょっとこのシーンは私にとっては不意打ちでした。

『ありがとう』という言葉はこういう風に使うのかと感心したと同時に、こんな素敵な会話が出来るしおりちゃんと美弥子さんの二人がすごくうらやましく、ほんのりと心が温まるようでした。

本シリーズ『晴れた日は図書館へいこう』には、彼女たちのように心温まる素敵な人が数多く登場します。児童文学という性格上からくるものでもあるでしょうが、それ以上に彼女たちの行動や言動には温かさが溢れていて読んでいるとすごく心地の良い気分になってくるのです。

もうなんというか、タイトルの『晴れた日は図書館へいこう』というフレーズからしても、気持ちよく一歩を踏み出したくなるような物語だと私は強く感じました。

やっぱり本が好き

本好きの人間にとって、本というのはただ知識や情報の書かれた紙束以上の意味を持っています。本屋や図書館でその本に出会うまでのいきさつやそのときの気分、そして読み終わった後に訪れる気持ちの変化や数年後に読み返したときの心地よさも、あるいは誰かから借りた本やプレゼントとしての本には人と人のつながりや想いが込められています。

そういった一冊の本を中心としたすべてを引っくるめて、私たち本好きの人間は本に書かれている以上の物語を楽しんでいます。

本シリーズ、『晴れた日は図書館へいこう』と『晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語』の2冊には本が好きな人がたくさん出てきます。あるいはこれから本が好きになる人もたくさん出てきます。

主人公のしおりちゃんを始めとして、彼女や彼らたちはほんとうに本というものを愛しています。作中には逆に本をあまり愛していない人も登場し、しおりちゃんたちは悲しい思いをしたりもします。現実にも本を愛することのない人は決して少ない数ではないでしょう。むしろ多いのかもしれません。だからこそ、本書のしおりちゃんのような人が増えて欲しいです。

この本を児童文学という枠組みに残しておくのは勿体ないことだと私は思います。私はこの本を読んで、大人も子供も関係なく多くの人に読んで欲しいと感じました。だからこそ文庫化されたのだろうし、私もこうして記事を書いています。文庫化してくれてありがとう!

この本と出会ったきっかけは本屋さんでの偶然によるものです。たまたま目について購入した本だからこそ、私にとってはより鮮明に深く心に残る作品となりました。前知識も情報も何もない中で出会った本が想像以上の作品であったことは何度もありますが、いつだってそういう本は私の宝物になってくれました。これだから本屋や図書館の徘徊散歩はやめられないぜぐへへ。

特に本書の第3話である『幻の本』というストーリーは読んでいてすごく面白く、最後にはほろりときてしまうような温かさに満ちた素敵な物語でした。一冊の本に込められた人々の思いや願い、本の辿ってきた歴史の積み重ねが見事に描かれているストーリーでシリーズの中でも一番好きな物語かもしれません。

晴れた日は図書館へいこう

この記事を書いているとき、外はどしゃぶりの雨でした。

でも明日には雨雲は過ぎ去って晴れるようです。

そうしたら、私もしおりちゃんのように晴れた日は図書館へいこう!

……しおりちゃんならどしゃぶりの雨でも図書館行ってるか。