私はまず本書のタイトルに惹かれました。

晴れた日は図書館へいこう

すごく素敵な言葉だと思いませんか?

この本は何気なく本屋さんで買った一冊でしたがすごく気に入った一冊となりました。本好き、そして図書館好きにはたまらない物語だと思います。本を好きという感情が主人公のしおりちゃんからいっぱい伝わってきて、読んでいるこちらも楽しくなってくるのです。私も本が大好きです。

ここ最近は『いなこん』の記事が連続してますし、ここらでちょっとティーブレイクとしましょうか。

どんな本?

本書『晴れた日は図書館へいこう』は2003年の第1回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞の佳作に選ばれた作品であり、著者の緑川聖司の単行本デビュー作品です。

今から10年ほど前に発売された児童文学の本ですが昨年の2013年に文庫化されたようです。その文庫化されたものをたまたま本屋さんで見つけ、私はこの本に出会いました。

本屋さんでこの本を発見したときは著者のことも物語の内容も全く知りませんでしたが、表紙のあたたかなイラストと素敵なタイトルに惹かれて購入しました。

さっそくおしゃれなカフェ(注:サイ○リヤ)でおいしいコーヒー(注:ドリンクバー)でも飲みながら読み始めたのですけれど、すぐにこの本の魅力に虜になっていきました。これは面白い!

物語の序盤に主人公の独白で以下のような文章が出てきます。まさに本書はこの通りの本でした。いわゆる“ジャケ買い”して正解だった。

 美弥子さんは「表紙とタイトルを見れば、その本のセンスが大体わかる」といっていたけど、わたしも最近、少しはわかるようになってきた。やっぱり表紙とタイトルが気に入った本は、中身も気に入ることが多い。

出典:『晴れた日は図書館へいこう』p.18

ストーリー

読みたい本は、たくさんある。その上、わたしが一冊の本を読んでいる間にも、世界中でたくさんの人が、わたしたちのために新しい本を書いてくれているのだ。雨の日だけじゃ、とても読みきれない。

だから、わたしは声を大にしていいたい。

晴れた日は、図書館へいこう!

出典:『晴れた日は図書館へいこう』p.7

本が大好きでいつも図書館へ通っている小学5年生の女の子『茅野しおり』が本書の主人公です。母子家庭で育った影響かしっかりとした性格をしていて、いとこのお姉さん『美弥子さん』が働いている雲峰市立図書館へ遊びに行くのが日課になっている少女です。ファンタジー系の本が好みらしい。

そんな本を愛しているしおりちゃんが通う図書館には多くの人が訪れます。そして本に関わるちょっとした問題や事件が日々起こっていて……。

本書はいわゆる『日常ミステリ』に属する物語です。

本を愛するしおりちゃんや司書の美弥子さんなど、図書館を舞台に本に関わっている人々の日常やちょっとした事件が描かれていきます。迷子の女の子の物語、60年間貸し出されていた本の昔話、返却ポストに投げ込まれた缶コーヒー事件など、本当に図書館で起きているようなことが中心となっているのです。

本が好きな、図書館が好きな人の気持ちが溢れている物語

本書は日常ミステリである以前に、本が大好きな女の子『しおりちゃん』の物語です。彼女の考えることや感情は、彼女と同じように本を愛する人々にとっては心地よく大きく共感出来るものでしょう。

図書館の中をワクワクしながら本を探す姿や、本を傷つける人への憤り、そして本を大事に思っている姿に自分自身の姿を重ねてみてしまいました。彼女と同じような気持ちは私も抱いたことがありますし、彼女の喜びも悲しみもすごくよく分かるのです。

しかし彼女はまだ小学生の子供ですから分からないこともたくさんあります。

それをうまく補助してくれているのがいとこのお姉さんである『美弥子さん』です。図書館で司書として働いている美弥子さんはしおりちゃんの良きお姉さんであり、あこがれの存在です。彼女がしおりちゃんを温かく見守り、時には適切な助言を与えたりおすすめの本を紹介したりすることで、図書館という場所がより魅力的に見えてくるのです。

物語的には図書館の利用者であるしおりちゃんと図書館の管理者である美弥子さんという二つの視点から図書館を描くことで、図書館という空間がどういう場所なのかが魅力的に描写されていきます。図書館好きにはたまらない物語ですし、逆に図書館のことを知らない人にとっては図書館の解説本になるかもしれません。

この物語の根底には『本が好き』という感情がまずあるように感じられます。本が好きという感情がどういったものなのか、なぜ本というものに惹かれていくのか、本書を読んでいると「そうそう、私もそう思う!」という場面が数多く出てくるのです。

自分で考えて、そして理解する喜び

本書は本が好きという感情の上にミステリの要素が加わり、より面白い物語となっています。

と言っても、図書館密室殺人事件とかが起こるでもなく、あくまで本に関わる日常の謎解きとなっているのですらすらと、そして気持ちよく読めるところも本書の楽しいところです。

主人公のしおりちゃんはまだ小学生ですからなんでもかんでも分かるわけではありません。しかし謎とぶつかったときにはしっかりと自分の頭で考えて、分からなければ人に聞いてみたりと、ただ問題が解決することを待つのではなく、自分で理解しようとがんばっています。

そこにミステリとして、そして図書館としての『自分で考えて、そして理解する』という喜びがあるのではないでしょうか。これはミステリとして大事な点であり、本を読む楽しさというのもまさにこれのことではないかと思います。

ミステリであれ読書であれ、ただ結果を知るだけでは何も面白味は生まれてきません。謎に対して考え、悩み、そして一つずつ理解していく過程こそが面白さの最大の要素です。その点において本書はしっかりとミステリになっているので、ただの本好きの本で終わらないところがすごくイイのです。

本書は本好きの人への感情的な楽しさから、ミステリとしての知の喜びと両面で楽しめる作品だと思います。こういう本はまさに読んでいてすごく楽しい本です。

休日にさらっと読む目的で買った文庫本でしたが、本当に大当たりの物語でした。

晴れた日は図書館へいこう

この心地の良い言葉と共に、子供も大人も関係なく本好きの皆へおすすめしたい一冊です。

本書には続刊があります。

さっそく買ってこなきゃ!