「プラネテス」は2003年にNHKBS2で放送されたテレビアニメです。全26話。

原作は幸村誠(ゆきむら まこと)の漫画で、1999年から『モーニング』で連載され単行本は全4巻で一旦完結しています。2002年には原作が星雲賞コミック部門、そして2005年にアニメが星雲賞アニメ部門を受賞。同名作品でダブル受賞を果たすという非常に評価の高い作品です。

→ PLANETES Web プラネテス公式ホームページ

今回はこのプラネテスをご紹介したいと思います。このアニメは本当に傑作です。

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物語は2075年、人類が宇宙へと進出し月の資源開発や火星への有人探査などが本格化している時代の話です。しかし宇宙進出の裏では、開発の過程で遺棄された人工衛星やロケットの残骸などがスペースデブリとして地球の周りにあふれ、衝突事故を起こすなどの大きな問題になっています。

これはアニメの世界設定の一つではありますが、現実的に問題になっていることでもあります。

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主人公の星野八郎太(ほしの はちろうた)、通称“ハチマキ”はテクノーラ社のデブリ課に所属する宇宙飛行士です。デブリ課の仕事は地球の周りを漂っているスペースデブリを回収することで、いわゆる宇宙の清掃作業員です。

デブリ屋という仕事を通し、彼の周囲の人間ドラマを描いた作品がこのプラネテスです。

プラネテスはこれから訪れるであろう未来の現実を描いたSF作品であると同時に、人間社会の問題を深く扱った作品です。作品の中で数々の問題を目にすることで大いに考えさせられる内容となっています。

しかしながら、プラネテスの最大の魅力は登場人物たちの生き様にあります。

序盤のストーリーでは宇宙の仕事に関わる人々や、社会問題などを多岐に渡り取り上げていきます。デブリ屋は決して華のある仕事ではありません。特にハチマキたちの所属するテクノーラ社のデブリ課は社内から「半課(はんか)」と呼ばれ蔑まれるような存在です。

半人前・半端者・人数が半分なので半課、さらには反抗的・反省しないなどと言われ放題です。宇宙開発には必要な仕事であるにも関わらず、利益の上がらない事業で危険も伴うため周囲の評価が低いのがデブリ屋という仕事なのです。

そして物語の中盤には主人公たちの与り知らぬところでストーリーは流れていきます。それが宇宙防衛戦線の登場です。

2070年代の地球では宇宙開発資源を巡り先進各国と後進各国で摩擦が発生しています

人類は宇宙連合を設立し宇宙資源の分配を行っていますが、資金を割り振れる先進国の独占状態になっているのが現実です。資金力、開発力に乏しい後進国家は宇宙開発の恩恵を受けることなく、貧困に沈み内戦状態のところも少なくありません。

宇宙に進出した人類ですが、問題点が摩り替わっただけで石油を巡っての現在の問題と少しも変わるところはないのです。

人は人でしかない、それはプラネテス全体に渡るテーマの一つです。

そしてこの現状を憂慮し行動を起こすのが宇宙防衛戦線です。

始まりは地球資源や宇宙資源に関する環境保護団体だったのですが、次第に思想・行動が過激化する中で『人類は宇宙に行くべきではなかった』という主張を始め、宇宙開発や企業に対して妨害工作をするようなテロリスト集団になってしまいました。

こういった仕事の問題、社会の問題、そして人間関係の中で主人公たちが葛藤し、悩み、答えを見つけていくところにプラネテスの面白さがあります。

主人公のハチマキ OPより

主人公の星野八郎太 通称“ハチマキ” OPより

主人公のハチマキには夢があります

夢を持ち続けるハチマキですが、内心、それは決して叶うことのない夢でしかないと思っています。そして日々の仕事をこなす中で何も出来ず、また、その現状に浸かりきってしまっているのです。

そこに現れるのが新入社員のタナベです。

新入りのタナベ OPより

デブリ屋の新入り“タナベ” OPより

彼女は常に愛を説き、常に“正しいこと”を主張します。しかしそれらは現実が見えていない理想の側面が強く、夢想家と言えるかもしれません。

自分自身の考えを押し通そうとするタナベと、理想を求めながらも結局は現実に埋没しているハチマキは対象的な存在で、事あるごとに二人は衝突します。

このハチマキとタナベが様々な経験を通して見つけ出す答え、そして最後にたどり着く答え、これらがプラネテス全体を貫くテーマとなっています。

アニメのプラネテスは原作にはない部分を非常にうまく纏め、全編を通してストーリーやキャラクターの完成度が高いアニメです。オリジナルの要素がかなりあるにも関わらず、原作の魅力を損なっていない点は高く評価されると思いますし、実際かなり評価されています。

特にハチマキとタナベの関係はアニメの方が丁寧に描写しているように感じました。

そもそも原作ではタナベが登場するのは物語の中盤以降ですが、アニメでは序盤から登場し準主人公の役割を果たします。原作での主人公はあくまでハチマキであり、タナベはハチマキに影響を与えた一人に過ぎないのです。

しかし中盤以降、物語はハチマキの葛藤やタナベとのすれ違いへと移り、主人公はやはりハチマキであることを認識することになります。

だからこそ、タナベ自身の内面を深く掘り下げストーリーに厚みを持たせたアニメの出来は素晴らしいです。序盤こそ、世間知らずでバカなタナベの数々の行動に苛立ちも覚えます。しかしながら、その彼女の行動ひとつひとつがクライマックスへと向かう中で昇華されていき、ハチマキにも大きな影響を与える存在へとなっていくことに深い感動と興奮を覚えました。

タナベが愛おしくてしょうがない。

物語終盤の遺書のシーンで私は震えるほどの衝撃を受けました。ハチマキがタナベの遺書を読んだとき、タナベの今までの言動が全て呼び起こされ、とても複雑な心境になりました。タナベの言う“愛”とは何なのか、彼女は何を考えていたのか、彼女自身も悩んでいたその現実に心が痛くなりました。

最後にアニメと原作の違いを一つ紹介しておきましょう。

アニメのエンディングはハチマキが木星に旅立つところで終わり、その後登場人物たちがどうなったのかは描かれていません。しかしとても希望溢れるエンディングですのでこれはこれで感動的なエンディングです。

ところが原作ではハチマキが木星に到着したところまで描かれています。

とある事情からハチマキが地球に向けてメッセージを送ります。このときにハチマキの言ったセリフがプラネテスを通しての究極のテーマなんだと思います。

デブリ屋から始まった彼らの物語の中で、あのセリフをハチマキが言うところに大きな意味があるのだと私は思います。プラネテスを読んで本当に良かったと思えるエンディングです。

もしアニメを見たけど原作は未読という方は、是非原作も読んでみてはいかがでしょうか。

ニコニコ動画にプラネテスの感動シーンを集めた動画がありました。作中でも屈指のシーン詰め合わせです。

思いっきりネタバレですが、興味ある方は是非。すでにご覧になった方はもう一度、あの感動を。