2015年もまもなく終わり、新年を迎える季節となりました。

今年はこれでもかと仕事が忙しい日々だったように思えます。昨年同様に2015年に読んだ本のベスト5を選ぼうと本棚を見返したら、あまりの読書量の少なさに驚きました。ブログの記事も全然書けなかったし、本も全然読めなかった一年でした。ブッダファック!

ここ最近はようやく落ち着き始めたので、しばらくはゆっくりと読書でもして過ごしたいです。まあそれでも、今年も何冊もの面白い本と出会うことが出来ました。

その中から5冊を選んで簡単にご紹介していきたいと思います。

ロミオと呼ばれたオオカミ

2003年の暮れ、アラスカの都市ジュノーの近郊に一頭の野生のオオカミが姿を現しました。広大な自然が残るアラスカには多くのオオカミが生息していますが、都市部周辺でその姿を見るのは希なことでした。そして驚くことにそのオオカミはジュノー周辺に住み着き、人間や飼い犬を怖れることなく逆に近づいてきたのでした。

やがてそのオオカミは街の住人からロミオと呼ばれ愛されていきますが、一方で野生の肉食獣を危険視する意見も飛び交い、人々の間に大きな論争を巻き起こしていくことになります。本書はその一連の出来事を綴ったノンフィクションです。

本書は本当に素晴らしい一冊です。私の中では間違いなく、今年読んだ本の中でもっとも素晴らしかった一冊です。将来に渡って語り継がれるべき名著である、とすら思っています。

この物語は美しく感動的でありながら、おぞましいほどに残酷な現実をも突きつけてくる物語です。アラスカに現れたロミオというオオカミが私たちにもたらしたものは何なのか、この物語から何を感じるべきなのか、そして何を学ぶべきなのか、本書を読んでつくづくと私はその意味を考えてしまいました。読了語には色々と複雑な思いが胸の中で渦を巻いて暴れていたように思えます。

本書は個別の記事にもしていますので、より詳しくはそちらもご覧になってみてください。

メイドインアビス

以前から読みたいと思っていたマンガの一つで、8月に新刊が出たときにまとめて購入しました。現在第3巻まで発売しています。

これは本当に面白いマンガです。絵柄は柔らかく、キャラクターは度し難いほどに魅力的です。特筆すべきは丁寧に作り込まれた世界観であり、登場人物たちと共にアビスを探検するワクワク感をこれでもかと味わえます。

そして世界観を作り込んでいるからこそ生まれる絶望や理不尽、残酷な現実があります。アビスに挑む彼らには次々と困難が襲いかかり、中には目を背けたくなるようなきついシーンも登場します。しかしそれらを乗り越えていける希望や救いもこのマンガにはあり、その物語は一度読んだら忘れられません。

この作品はネットで連載されており、下記のリンク先から閲覧出来ます。最新話は随時更新されますし、1話から4話までは常に公開されていますので是非ご覧になってみてください。絵柄や世界観にグッとくる何かを感じられたのなら、是非単行本を買って続きを読んでみることをおすすめします。

期待を裏切らない面白さがこのマンガにはあるはずです。

それにしてもナナチはかわいいですね。

いつかぼくが帰る場所

今年読んだ中でもかなり良質な小説です。

謎の疫病により人類も文明も壊滅的な被害を受けた世界が物語の舞台です。設定的にはSF寄りですが科学的な要素は物語の主題ではありません。荒廃した世界に生きる主人公の心情を描いた牧歌的な要素がその中心にあり、ヘミングウェイを連想させるような文学的な作品となっています。

そして本書の大きな特徴としては、会話に引用符「」が存在しません。物語は主人公の一人称視点で語られるのですが、文章中で地の文とセリフの区別はありません。どこからが胸の内の言葉で、どこからが実際に声に出した言葉なのかの区別がつかないのです。さらには疫病の影響で主人公は脳に後遺症を患っており、時折思考が混乱するため文章の内容も前後したり、いきなり話が飛んだりすることがあります。

しかしながら、読みづらさは少しも感じませんでした。文章は詩的でリズムが心地良く、それらが主人公の心情の変化と重なり一層胸に響きます。主人公の考えていること、主人公の感情の変化、それらが味わい深く伝わってくる文章こそ、この作品の大きな魅力だと思います。

本書の原題は「The Dog Stars」ですが、その意味は最後まで読めば理解出来ると思います。本書を読み終わりその意味に気がついたとき、胸の奥がじんわりと温かくなるような思いでした。

なんとも言えない、けれども温かい幸福感に満たされた小説です。

仮面の街

ゾンベイ市の魔女グラバの家で暮らしていた孤児のロウニーはある日、街で禁止されている芝居を上演するゴブリンの一座に出会います。どうしても芝居が見たいロウニーは一座に潜り込むのですが、そこで行方不明になっていた兄の噂を聞くのでした。兄を探し出すため、ロウニーは魔女の家から逃げ出してゴブリン一座の下へと向かう決心をします。

表紙のイラストに一目惚れして購入したファンタジー小説で、一見すると児童文学のような装いの本ですが大人にも是非読んで欲しい上質のファンタジーが詰まっている一冊です。ゴブリン一座との出会い、魔女グラバの追跡、仮面の持つ意味、街を襲う洪水などなど、随所に想像力を強くかき立てられるような展開や文章が登場します。

特に序盤のロウニーが観ることになるゴブリン一座のシーンなどはすごく読み応えがあります。ロウニーが感じた熱狂や興奮、そして驚きといった感情が面白いほど伝わってきて、私まで胸が熱くなっていきました。そしてファンタジーだからこそ味わえる、次に一体何が起こるのか予想が出来ない面白さが私の想像力をかき立てます。魔法にかけられたかのようにページをめくる手は止まりません。

本書の続編である【影なき者の歌】も合わせて購入したのですが、忙しさのあまりまだ読んでいないのが心残りではあります。これからゆっくりと読んでいくつもりです。これも絶対面白いはずですから。

園芸植物学百科

趣味で観葉植物を育てているので、今年も参考となる本を何冊か購入しました。その中でも本書が抜群に面白かったのでご紹介したいと思います。と言っても、本書は「植物学」に関する本なので特定の品種というよりかは植物全般に関するものであり、専門的なものも含まれています。

植物界の分類から細胞や組織の解説、生殖や土壌の栄養素など内容は多岐に渡り、結構難しいことも書かれています。文章のボリュームもそれなりにあるので、読み終わるのにもかなりの時間がかかりました。忙しい中、少しずつ読み進めて2ヶ月くらいかかったと思います。

しかし、それだけの時間をかけても読み終えた価値のある一冊です。本の装丁はとてもきれいで紙質も素晴らしく、ページのいたるところに植物のイラストがフルカラーで掲載されています。それらを眺めるだけでもページをめくる喜びを味わうことが出来ました。多少内容には難しいものもありますが、きちんと解説はされているのでじっくりと読めば理解には困らないでしょう。

そして植物学の発展に携わった人物の紹介が簡単に載っているコラムがあるのですが、これがすごく面白かったです。大航海時代、世界を周りながら植物を収集した植物学者、膨大な量の植物を絵にした画家、遺伝について研究していた科学者、そういった人々の歴史を読んでいくと、植物学が発展してきた歴史を垣間見ることが出来ます。

今年、読み終えるのに一番苦労した一冊ですが、一方で読むのがすごく楽しかった一冊でもあります。