王ドロボウの帰還 2017/2026
- Category : 日記 / diary
※ この記事は2017年に余所で書いたものを加筆修正して再掲したものです
2017年8月の某日、街中のコンクリートも蒸発しそうな真夏の日差しの中、私は東京の浅草橋を訪れていました。8/19~9/3までの期間、BOOKMARK浅草橋にて開催されていた『王ドロボウJING 原画展』を観るためです。

王ドロボウJINGとは
『王ドロボウJING』とは、1995~1998年までコミックボンボンに連載されていた熊倉裕一による全7巻のマンガ作品です。その後、1999~2005年まで月刊マガジンZにて続編の『KING OF BANDIT JING』が連載され、こちらも全7巻が発売されました。
輝くものは星さえも盗むと伝えられる王ドロボウの末裔の少年「ジン」、そして相棒の喋る鳥「キール」が物語の主人公で、彼らは世界を旅しながらお宝を盗むドロボウ稼業を生業にしていました。「〇〇編」という大きなエピソードごとに訪れる街や世界観が異なり、毎回、ジンガールとも呼ばれる女性のゲストキャラを加えて、彼らが何かを盗み出すまでの物語が描かれていきます。
とにかく世界観が魅力的な作品です。
詩的で芸術性をも感じさせる独特な世界観は、マンガ作品としてはあまり類を見ないものかもしれません。ウィットに富んだ軽快な台詞回しも心地良く、美麗な筆致で描かれるキャラクターたちの個性が光ります。2002年にはTVアニメ化、2004年にはOVAも発売されましたが、2005年を最後に連載は休載しています。
その後、掲載誌も廃刊となって連載は再開されませんでした。言葉は悪いですが、ずいぶん昔に終わってしまった作品と言えるでしょう。そんな作品の原画展がなぜ、2017年に開催されたのか。そこには大きな理由がありました。
王ドロボウの帰還 2017
2017年4月27日、ひとつの小さなニュースがネットをざわつかせました。『魔法先生ネギま!』などで知られる漫画家の赤松健先生によって熊倉裕一先生の所在が判明し、『王ドロボウJING』の電子書籍化が決定したというニュースです。
2005年に『KING OF BANDIT JING』が休載となり、翌年には新連載『Q&A』が開始されたものの、単行本が出る間もなく休載となってしまいました。療養中との情報も一時期ありましたが、その後も連載が再開されることはなく、状況すら不明のまま、10年以上もの歳月が過ぎ去りました。
ファンとしては非常にもどかしく、せめて近況だけでも何か情報がないかとネットを徘徊するものの、得られるものは何ひとつなく、ただただ、心配な気持ちだけが降り積もる日々でした。『王ドロボウJING』はすごく良い作品です。もし、先生が再び筆を執るというのならば、何年でも何十年でも待ち続けられるであろう、私にとってはそんな作品でした。そんな贅沢は言わずとも、せめて先生のご無事が知れたら・・・・・・そんな願いも諦め掛けていた2017年、突如として物事が動き始めたわけです。
2017年7月28日からは電子書籍の発売が開始されてアニメの配信も行われました。その告知が発表された際、「王ドロボウの帰還」という謳い文句に目頭が熱くなったのは、きっと私だけではないはずです。そして、8月には原画展までもが開催される運びとなりました。
ムーランルージュを観るために
『KING OF BANDIT JING』の第4巻と第5巻には、「赤い風車と恋愛税編」というエピソードが掲載されています。
ジンとキールが訪れたのは常に深い霧が立ちこめる「葬礼特区ムーランルージュ」と呼ばれる街です。街を治める特区長のボルスは24年前の大火で婚約者を失い、街を葬礼特区と定めた上で「恋愛税」を導入しました。恋愛中と見なされた者は税金を支払わねばならず、ボルスはその資金を投入して大火で亡くなった者への巨大な墓標、「完全なる愛(パルフェ・タムール)」を造り上げようとしています。
ジンとキールは検問所で脱税犯としてアニゼット審査官(ジンガール)に捕まってしまいますが、手錠で繋がったアニゼットを連れ去り検問所を強行突破します。やがて彼らは、深い霧に紛れて愛をささやき合う人々の姿や、ボルスがパルフェ・タムールを建設する真の理由を知ることになるのでした。そして、王ドロボウが最後に盗むものは・・・・・・参考までに講談社の公式ページで冒頭部分が試し読みできますので、ぜひご覧になってみてください。
参考リンク → 『KING OF BANDIT JING (4) 試し読みあり | 講談社
街の呼称である「ムーランルージュ」とは「赤い風車」の意で、大火で燃え落ちた風車がその由来となっています。単行本第4巻の冒頭にそのシーンが見開きカラーで掲載されていますが、その原画が、2017年の原画展で展示されました。

展示物のほとんどは撮影不可でしたが、このムーランルージュは撮影が許可されており、原画展の開催と同時にネット上には次々と画像が投稿されました。
暗闇の奥で赤く燃える風車と炎に照らされる人物(若き日のボルス)の対比が美しく、まるで一枚の絵画のような趣が漂い、これがマンガの原画だということが何だか信じられません。ところでよく見ると、絵が描かれているのは紙でもキャンバスでもなく、ただの板です。棚板です。知る人の話によると、どうやらテレビ台のボードに直接描かれたものらしいです。
私は原画展の開催を事前に知らなかったのですが、ネットでムーランルージュの画像に出会い、強い衝撃を受けました。この一枚の絵を観たいが為に東京まで足を運んだのです。自分自身の眼で直にその絵を観なければ、王ドロボウが帰還した2017年の夏を終えることはできないと思ったからです。そして実際にその絵を前にして、『王ドロボウJING』という作品に再び出会えたことに深く感謝しました。こんなにも良い日が訪れることを、私は夢にも思っていなかったのです。
原画展では他にもたくさんの原稿やイラストが展示されており、そのどれもがたいへん素晴らしいものでした。まだデジタル作画が広く普及し始める前のアナログの作品です。線の一本一本が鉛筆やペンで描かれ、トーンは丁寧に切り貼りされ、カラー原稿は色ペンや絵の具で彩色されています。それはまさに芸術と呼ぶに相応しい、プロの仕事でした。中でも、大ゴマで描かれるキャラクターの瞳とその表情の美しさには、吸い寄せられるような魅力がありました。熊倉先生の描くキャラクターは本当に美しいです。その瞳の深さに、その表情の小さな影や小さな輝きに、昔も、そして今も、私は惹かれているのかもしれません。
会場では限定グッズの販売も行われていましたが、開場してすぐに完売してしまい、私は何も買うことができませんでした。それだけ、王ドロボウの帰還を心待ちにしていたファンは多かったのでしょう。会場の盛況ぶりがその全てを物語っています。原画展の開催に尽力してくださった関係者の皆様、そして何よりも熊倉裕一先生には心から感謝しております。本当にありがとうございました。
ジンもキールも、気ままな旅を続けるドロボウ稼業です。きっといつの日か、またふらりと現れては私たちの何かを盗んでいくことでしょう。この作品が大好きだからこそ、私は再び彼らに出会えるその日が来ることをいつまでも望み、そして待ち続けたいと思います。
まあ、千年分のおあずけで飢え死にしない程度に。
王ドロボウの帰還 2026
2026年7月22日、まるくじ公式が突如として『王ドロボウJING』のグッズ告知を行い、ネットがざわつきました。
・・・・・・夢じゃないですよね?
・・・・・・この令和の時代に、『王ドロボウJING』の新規グッズ?
あの暑い夏から9年。まさか、新規のグッズ展開が行われるとは夢にも思っていませんでした。原画展のときは何も買えなかったので本当に嬉しかったです。ありがとうございます!
いっぱい、お金、落としましたから! ぜひ、第2弾、第3弾もお待ちしております!
そして、来年の2027年は、原画展から10年の節目です!
ぜひ、やりましょう! もう一度!
お願いします! お願いします!!


